国際情報

天安門事件で米国に亡命した中国人弁護士が中国人留学生に刺殺される

事件を起こした中国人留学生は精神的に不安定な状態だったという

事件を起こした中国人留学生は精神的に不安定な状態だったという

 1989年6月の天安門事件当時の著名な民主化運動指導者で、事件後、米国に亡命し、ニューヨークで弁護士として活動していた李進進氏(66)が3月14日、弁護士事務所で中国人女性の留学生に腹部を刺され殺害される事件が起こった。この女性は精神的に不安定な状態だったとの証言もあり、李氏との間でトラブルが発生していたとみられている。米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」が報じた。

 この中国人女性は張暁寧と名乗っており、年齢は25歳で、昨年7月、留学生としてニューヨークに到着。「北京で(中国人)警官に強姦された」などと訴え、ニューヨークの中国総領事館や国連本部を訪れては陳情を繰り返していたという。

 女性はニューヨーク市内の李氏の弁護士事務所を何回も訪れており、米国籍の取得などについて相談していた。しかし、時々激高して大声を出すなどしたため、李氏は彼女を避けていたようだ。

 事件が起こった3日前の11日にも、この女性は李氏に大声を出して泣きわめき、暴力を振るおうとしていたことから、李氏の秘書が警察に通報し、女性は事務所から追い出されるというトラブルがあった。

 その際、李氏は警察に対して、「この女性はまだ若いので、逮捕しないでほしい」などと穏便に済ますよう頼んでいたという。

 ところが、女性は14日正午ごろ、再び、事務所を訪れ、李氏と会うと、いきなりナイフを取り出して、李氏の腹部を数回めった刺しにした。李氏は救急車で病院に運ばれたが、すでに絶命していた。

 李氏は1955年生まれで、北京大学の博士課程に在籍中に中国の民主化運動に身を投じ、1989年の天安門事件後、警察に逮捕され服役、釈放後、米国に亡命。ウィスコンシン大学で法学の博士課程を修了。その後、ニューヨークの弁護士事務所で働いていた。

 その傍ら、李氏はやはり天安門事件後、米国に渡り、ハーバード大学で博士課程を修了し、いまも民主化運動団体を主宰している王丹氏らと連携して、米国で中国民主化団体のリーダーとして活躍していた。

 李氏の悲報を聞いた王丹氏らは「事件は筆舌に尽くしがたいもので、李氏には落ち度はない。人間の本性はどうしてこんなに邪悪なのか。説明のしようもない」などと語っているという。

関連キーワード

関連記事

トピックス

中学時代の江口容疑者と、現場となった自宅
「ガチ恋だったのかな」女子高生死体遺棄の江口真先容疑者(21) 知人が語る“陰キャだった少年時代”「昔からゲーマー。国民的アニメのカードゲームにハマってた」【愛知・一宮市】
NEWSポストセブン
すき家がネズミ混入を認め全店閉店へ(左・時事通信フォト、右・HPより 写真は当該の店舗ではありません)
【こんなに汚かったのか…】全店閉店中の「すき家」現役クルーが証言「ネズミ混入で売上4割減」 各店舗に“緊急告知”した内容
NEWSポストセブン
中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ(右・時事通信フォト)
X子さんフジ退社後に「ひと段落ついた感じかな」…調査報告書から見えた中居正広氏の態度《見舞金の贈与税を心配、メッセージを「見たら削除して」と要請》
NEWSポストセブン
ロコ・ソラーレが関東で初めてファンミーティングを開催(Instagramより)
《新メンバーの名前なし》ロコ・ソラーレ4人、初の関東ファンミーティング開催に自身も参加する代表理事・本橋麻里の「思惑」 チケットは5分で完売
NEWSポストセブン
江口容疑者と自宅
《16歳女子高生の遺体を隠し…》「6人家族だけど、共働きのご両親が不在がちで…」江口真先容疑者(21)が実家クローゼットに死体を遺棄できた理由
NEWSポストセブン
中居氏による性暴力でフジテレビの企業体質も問われることになった(右・時事通信)
《先輩女性アナ・F氏に同情の声》「名誉回復してあげないと可哀想ではない?」アナウンス室部長として奔走 “一管理職の職責を超える”心労も
NEWSポストセブン
濱田淑恵容疑者の様々な犯罪が明るみに
【女占い師が逮捕】どうやって信者を支配したのか、明らかになった手口 信者のLINEに起きた異変「いつからか本人とは思えない文面になっていた」
週刊ポスト
中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ(右・時事通信フォト)
「スイートルームの会」は“業務” 中居正広氏の性暴力を「プライベートの問題」としたフジ幹部を一蹴した“判断基準”とは《ポイントは経費精算、権力格差、A氏の発言…他》
NEWSポストセブン
大手寿司チェーン「くら寿司」で迷惑行為となる画像がXで拡散された(時事通信フォト)
《善悪わからんくなる》「くら寿司」で“避妊具が皿の戻し口に…”の迷惑行為、Xで拡散 くら寿司広報担当は「対応を検討中」
NEWSポストセブン
男性キャディの不倫相手のひとりとして報じられた川崎春花(時事通信フォト)
“トリプルボギー不倫”4週連続欠場の川崎春花、悩ましい復帰タイミング もし「今年全休」でも「3年シード」で来季からツアー復帰可能
NEWSポストセブン
騒動があった焼肉きんぐ(同社HPより)
《食品レーンの横でゲロゲロ…》焼肉きんぐ広報部が回答「テーブルで30分嘔吐し続ける客を移動できなかった事情」と「レーン上の注文品に飛沫が飛んだ可能性への見解」
NEWSポストセブン
中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ
「スイートルームで約38万円」「すし代で1万5235円」フジテレビ編成幹部の“経費精算”で判明した中居正広氏とX子さんの「業務上の関係」 
NEWSポストセブン