スポーツ

奄美・大島高校の注目左腕 「中学時代は軟式で連合チーム」から甲子園へ

奄美・大島高校のエース左腕・大野稼頭央

奄美・大島高校のエース左腕・大野稼頭央

 鹿児島本土から約380キロの「奄美大島」から、3月18日に開幕したセンバツ甲子園の切符を勝ち取ったのが鹿児島県立大島高校だ。練習時間や移動距離などで離島は不利だと思われがちだが、本来ならハンデとなる環境が、むしろアドバンテージに変わることもあるという。ノンフィクションライターの柳川悠二氏がリポートする。【前後編の前編】

大阪桐蔭のエースより凄い!?

 およそ6万人が暮らす鹿児島県の奄美大島にある県立大島高校の塗木哲哉監督(54)は、昨年11月、東京を訪れていた。目的は全国の地区大会を勝ち抜いた10校が集結し、秋の日本一を決する明治神宮大会の視察だった。

 島内では「大高(だいこう)」の愛称で親しまれている大島高校は、昨秋の鹿児島大会を離島勢として初めて制し、九州大会でも準優勝。21世紀枠で初出場した2014年以来となる2度目の甲子園出場を“当確”させていた。1回戦全試合の観戦を終えた塗木監督は、同行していた小林誠矢部長にこう口を滑らせた。

「ひいき目なしにうちの大野が一番かもしれんな」

 大阪桐蔭には前田悠伍という同校史上最高の左腕と目される1年生投手がいる。広陵(広島)にも明秀日立(茨城)にも好投手や豪腕がいた。それでも大高のエース左腕である大野稼頭央に抱く自信と期待は膨んだ。PL学園出身の松井稼頭央(現・埼玉西武ヘッドコーチ)のファンだという両親に名付けられた大野は、175センチの細身の体型ながら、全身を使ったしなやかな美しいフォームで白球を投じてゆく。MAX146キロ。大きく曲がる縦のスライダーが宝刀だ。

「とにかく野球センスがある。ピッチャーしかできないような選手って多いじゃないですか? 稼頭央の場合は、打つことも守ることも素晴らしい。左投げですが、内野だってできるかもしれない。『お前の商品価値を高めるのは、これからのお前次第だ』と伝えています」(塗木監督)

 高校からプロ入りを目指す大野の大願が成就すれば塗木監督にとって教え子のプロ第一号となる。

 大島高校を訪れた2月下旬の2日間、奄美は雨に祟られた。時折、スコールのような強い雨風が襲い、慌ててひさしのある場所に急ぐナインの姿があった。年間の雨量は屋久島が上回るものの、曇天が多い奄美大島は国内でも日照時間が突出して短いことで知られる。

 184センチ、105キロという大柄な体格で、コテコテの鹿児島弁を操る塗木監督は、数学の教師だ。54歳となる現在まで甲子園とは無縁の監督人生を送ってきた。鹿児島南、頴娃高校、志布志高校の監督時代で最も甲子園に近づいたのは監督2年目の1995年夏(県準優勝)。県大会を制した経験もない。そんな彼が奄美にやってきたのが、2014年春だ。副部長から2016年7月に監督となり、5年半後、聖地にたどり着いた。

関連記事

トピックス

ハワイ別荘の裁判が長期化している(Instagram/時事通信フォト)
《大谷翔平のハワイ高級リゾート裁判が長期化》次回審理は来年2月のキャンプ中…原告側の要求が認められれば「ファミリーや家族との関係を暴露される」可能性も
NEWSポストセブン
今年6月に行われたソウル中心部でのデモの様子(共同通信社)
《韓国・過激なプラカードで反中》「習近平アウト」「中国共産党を拒否せよ!」20〜30代の「愛国青年」が集結する“China Out!デモ”の実態
NEWSポストセブン
裁判所に移されたボニー(時事通信フォト)
《裁判所で不敵な笑みを浮かべて…》性的コンテンツ撮影の疑いで拘束された英・金髪美女インフルエンサー(26)が“国外追放”寸前の状態に
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さん(時事通信フォト)
《自宅でしっぽりオフシーズン》大谷翔平と真美子さんが愛する“ケータリング寿司” 世界的シェフに見出す理想の夫婦像
NEWSポストセブン
山上徹也被告が法廷で語った“複雑な心境”とは
「迷惑になるので…」山上徹也被告が事件の直前「自民党と維新の議員」に期日前投票していた理由…語られた安倍元首相への“複雑な感情”【銃撃事件公判】
NEWSポストセブン
アメリカの人気女優ジェナ・オルテガ(23)(時事通信フォト)
「幼い頃の自分が汚された画像が…」「勝手に広告として使われた」 米・人気女優が被害に遭った“ディープフェイク騒動”《「AIやで、きもすぎ」あいみょんも被害に苦言》
NEWSポストセブン
お騒がせインフルエンサーのボニー・ブルー(時事通信フォト)
《潤滑ジェルや避妊具が押収されて…》バリ島で現地警察に拘束された英・金髪美女インフルエンサー(26) 撮影スタジオでは19歳の若者らも一緒だった
NEWSポストセブン
山上徹也被告が語った「安倍首相への思い」とは
「深く考えないようにしていた」山上徹也被告が「安倍元首相を支持」していた理由…法廷で語られた「政治スタンスと本音」【銃撃事件公判】
NEWSポストセブン
不同意性交と住居侵入の疑いでカンボジア国籍の土木作業員、パット・トラ容疑者(24)が逮捕された(写真はサンプルです)
《クローゼットに潜んで面識ない50代女性に…》不同意性交で逮捕されたカンボジア人の同僚が語る「7人で暮らしていたけど彼だけ彼女がいなかった」【東京・あきる野】
NEWSポストセブン
山本由伸選手とモデルのNiki(Instagramより)
「球場では見かけなかった…」山本由伸と“熱愛説”のモデル・Niki、バースデーの席にうつりこんだ“別のスポーツ”の存在【インスタでは圧巻の美脚を披露】
NEWSポストセブン
モンゴル訪問時の写真をご覧になる天皇皇后両陛下(写真/宮内庁提供 ) 
【祝・62才】皇后・雅子さま、幸せあふれる誕生日 ご家族と愛犬が揃った記念写真ほか、気品に満ちたお姿で振り返るバースデー 
女性セブン
村上迦楼羅容疑者(27)のルーツは地元の不良グループだった(読者提供/本人SNS)
《型落ちレクサスと中古ブランドを自慢》トクリュウ指示役・村上迦楼羅(かるら)容疑者の悪事のルーツは「改造バイクに万引き、未成年飲酒…十数人の不良グループ」
NEWSポストセブン