ロシアによる侵攻を受けているウクライナのゼレンスキー大統領が、3月23日に日本の国会でオンライン演説する調整が進められている。米国や英国、ドイツなどの議会でオンライン演説し、巧みなスピーチによって支持を広げているゼレンスキー氏。西側諸国の結束が強まっていくことに、戦況が思い通りにならないプーチン大統領も焦りを感じているとみられる。そうしたなか、日本の国会での演説内容やその影響にも、注目が集まっている。
もともと俳優・コメディアンだったゼレンスキー氏の“表現力”がここにきて、ロシアと対峙するうえでの大きな武器となっている。ベテラン政治ジャーナリストはこう言う。
「米国の議会に対する演説では『真珠湾攻撃』を持ち出し、ドイツの議会には『ベルリンの壁』を引き合いに出すなど、ターゲットに刺さるような工夫が凝らされた演説をしている。スピーチライターも優秀なのだろうが、訴えかけるゼレンスキー氏の話術によるところも大きい。日本人は当然、真珠湾攻撃よりも広島・長崎への原爆投下や旧ソ連による満州侵攻、シベリア抑留のほうがよっぽど酷いことだと考えている人が多い。23日の演説は、そうしたポイントに訴えかける話が入ってくるのではないか。
ゼレンスキー氏は2019年のウクライナ大統領選で当選するまで、政治経験はなかった。2015年から同国で放送されていた、さえない教師がちょっとしたきっかけで大統領にのぼりつめる『国民の僕(しもべ)』というドラマで大人気となり、そのまま現実の大統領選に当選してしまった。所属する政党名はドラマのタイトルそのままの『国民の僕』です。当初は政権運営に難渋していたが、ロシアの侵攻を受けてからは、危険を顧みずにキエフにとどまって支援を訴えかける姿勢に対して、日に日に支持が広がっています」
聴衆に訴えかける力に長けているゼレンスキー氏だけに、日本の国会での演説も予定調和の紋切り型の演説ではなく、練りに練られたものとなることが予想されているのだ。それだけに、どういった内容になるのかが気になるところだろう。立憲民主党の泉健太代表はゼレンスキー氏の演説についてツイッターで、〈国会演説の前に『首脳会談・共同声明』が絶対条件だ。演説内容もあくまで両国合意の範囲にすべき。それが当然だ〉と投稿。事前に演説内容に調整が必要だと主張したが、それだけ“どんな発言が飛び出すかわからない”とみられているとも言えよう。