靴下やワイヤレスイヤホンなど、二つそろわないと役割を果たさないものがある。しかし、なぜだか街なかには片方の手袋だけが落ちているのだ──。「片手袋」に魅せられた、片手袋研究家・石井公二氏に、その魅力を聞いた。
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「片手袋研究家」を名乗っていますが、「何を」「どこまで」突き詰めればいいのか、皆目見当がついていません。片手袋とは、片方だけ落ちている手袋のこと。2004年頃にカメラ付携帯電話を初めて購入したことが始まりでした。
最初の被写体は玄関先に落ちていた片手袋。何の気なしに撮影した時、まるで雷に打たれたように全身が身震いしたんです。それから取り憑かれたように片手袋を撮影するようになりました。今では5000種類以上は撮っていると思います。
やがて、落ちている時期や場所、状況や種類などの類似点や相違点に着目して分類図を作成するなど、研究の観点で向き合うようになりました。もはや、楽しいからやっているというより、義務として続けている感じです。なぜここまでしなければならないのか自分でも説明がつかず、私はこれを「片手袋の呪い」と呼んでいます(笑)。
【プロフィール】
石井公二(いしい・こうじ)/1980年生まれ、東京都出身。幼少時に読んだ絵本『てぶくろ』から片手袋に興味を持つ。著書に『片手袋研究入門』がある。
※週刊ポスト2022年4月1日号