いまやお笑いを学べる学校は10校以上存在するが、なかでも吉本興業が運営する「NSC」は、圧倒的多数の人気芸人を輩出してきたことで知られる。
NSCとは、学校の通称「ニュー・スター・クリエイション」の頭文字をとったもので、実際の校名は吉本総合芸能学院。若い感覚のお笑いをリードするべく1982年に創立されて以降、本来の学校名よりNSCとの通称が広く知れ渡った。卒業生はアイドル系芸人から医者芸人まで千差万別、ある者は海外でも笑いをとることに成功し、ある者は本を執筆し、ある者は俳優に、と活動が多岐にわたるニュータイプ揃い。一昔前の芸人像と異なる彼らの学び舎としては、やはり新感覚の通称NSCがフィットする。
新型コロナの影響により、2020年度に続いて2021年度のNSC生は、対面とリモートを並行しての授業を余儀なくされた。だが、ステージに上がりネタを披露するライブだけは、芸人の能力を高めるために必須の空間。生徒たちはマスクと透明フェイスカバーのダブル装備で集い、ステージ上ではマスクを外し全力でネタを披露してきた。
6月から毎月、吉本興業の劇場で行なわれてきたライブで場数を踏み、成長した生徒たち。卒業を間近に控え、2月28日に挑んだのは大阪と東京で同日に開催された「NSC大ライブ」だった。審査員と一般観客による票で決まるネタバトルであり、優勝者には、吉本の劇場、テレビ、ラジオへの出演が約束される。学校内イベントとは思えぬ豪華な優勝特典こそ、吉本興業運営の強みだ。
大阪校44期生による戦いは「宛先プレーン」が制し、東京校27期生からは「ミヤコジマ」が勝ち抜いた。どちらも、まるで10年は芸人生活を送ってきたかのような、安定感のあるステージを見せるコンビである。
卒業を待たずして、彼らは一足早く芸人デビューを飾ることになるが、当然ほかの生徒も卒業後は吉本への所属が許される。NSCに1年間きちんと通えば、仕事がすぐ見つかるかどうかはともかく、芸人として仕事を受ける基礎的な力は身につく。NSCはその名の如く、ニュー・スターを確実に創り出すシステムを構築していた。