ヨーロッパ旅行で鉄道を利用したとき、改札がないことに驚いた経験がある人もいるだろう。それでも皆が切符をきちんと購入しており、乗客が乗車券を自己管理するこの方式は「信用乗車」と呼ばれる。ライターの小川裕夫氏が、ICリーダーの積極的導入で事実上の信用乗車での運用が広まりつつある広島電鉄についてレポートする。
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東京都を走る都電荒川線や東急世田谷線、熊本県熊本市を走る熊本市電などは均一運賃制を採用している。つまり、一駅の移動だけでも、端から端まで乗り通しても一乗車分の運賃だけを支払う。
こうした均一運賃制のメリットは、乗車時に運賃の支払いを済ませるので降車時に運賃を精算する必要がないことだ。運賃を先払いすれば、どの扉からでも降車できる。これなら通勤・通学のラッシュの時間帯でも乗降がスムーズになり、それが駅での停車時間を短縮させる。
一方、乗車する距離に応じて運賃が高くなる距離制、乗車した区間に応じて運賃が変動する区間制といった運賃制度もある。そうした距離制・区間制を採用している鉄道で、駅で改札業務・運賃収受をしていない場合は、一般的に後ろから乗車して前から降車する際に運賃を支払うシステムを採用していることが多い。
広島電鉄(広電)は、広島県の広島市・廿日市市を中心に路面電車やバスを運行する事業者として知られる。広電は約19.0キロメートルの軌道線と呼ばれる区間と、路面電車がそのまま乗り入れる約16.1キロメートルの鉄道線があり、これらを合わせると国内最大の路面電車ネットワークを有する。
広電は単に広大な路線網を有するというだけではなく、先取的な取り組みで国内の路面電車事業者をリードしてきた存在でもある。
例えば、広電は定時運行を確保するために広島県警と協力。県警は軌道内の自動車走行を禁じているほか、右折できる場所を限定。これらの施策により、路面電車の運行を阻害しない道路・交通のルールづくりが広まった。それまで道路(自動車)の邪魔者とされてきた路面電車だったが、広島では「路面電車が主役」という概念が定着する。
また、広電は車両の改良にも積極的で、一昔前の「のんびり走る」といったイメージを覆した5000形を1999年に登場させている。
5000形はグリーンムーバーという呼び名で市民に親しまれ、そのスタイリッシュでスピード感のある外観は鉄道ファンや観光客を魅了した。好評な声を集めたことを追い風に、2004年には後継車となる5100形が登場。5100形はグリーンムーバーmaxと呼ばれた。