3月23日、日本の国会でのオンライン演説で、祖国存亡の危機を訴えたウクライナのゼレンスキー大統領。カメラにまっすぐ向かい、「ロシアは事故を起こしたチェルノブイリ原発を支配下に置き、戦場に変えた」などと語り、日本に復興を含めた今後の支援を強く求めた。
これまでも、ゼレンスキー氏は各国の議会で聴衆の心を動かす演説を重ねてきた。武力を振りかざすロシアのプーチン大統領に発信力で対抗するゼレンスキー氏には、各国の為政者や国民の琴線に触れる言葉や話題をあえて用いる、したたかさが垣間見える。
英議会ではシェイクスピアの一節を引用し、第2次大戦中に英国民を鼓舞したチャーチルの歴史的演説になぞらえる表現を用いた。日本の国会演説では国連安保理の機能不全も強調。長く常任理事国入りを望みながら果たせずにきた日本にとって、素直に首肯できる工夫が凝らされていた。
ゼレンスキー氏は元俳優として知られるが、ロシアの侵略が始まって以降、Tシャツ姿でキエフ市内からSNSの動画投稿を続け、ウクライナ国民を鼓舞し続けている。
ウクライナ南部の工業地帯出身のゼレンスキー氏は、大学在学中にコメディ劇団を結成し、芸能プロを率いてテレビ番組などを制作してきた。
同社が制作したドラマ『国民の僕』では、腐敗政治を批判して大統領になる高校教師役を自ら演じ、国民的な人気者に。その人気に乗じて作品と同じ名前の政党を設立すると、2019年の大統領選に出馬し、当選を果たした。
そんな「政治経験ゼロ」の大統領を支えるのが、22人の閣僚たちだ。ウクライナ人の国際政治学者、グレンコ・アンドリー氏は顔ぶれについて、「日本とは選ばれ方もキャリアも全く違う」とする。侵略に屈しない政権は、どのようなメンバーで構成されるのか。