中国東方航空が3月21日、中国南部の広西チワン族自治区の山中に墜落した事故で、中国当局は乗客乗員132人全員の死亡が確認されたと発表した。
被害規模もさることながら、離陸してから約1時間後に突然急降下を始めた機体が2分で約8000メートル降下し、ほぼ垂直の状態で地上に墜落したという不可解な状況が波紋を呼んでいる。
「操縦系統のトラブルが原因だった可能性もある」と報じられているが、事故の詳細は分かっていない。27日には現場の地中からフライトレコーダー(飛行記録装置)が発見された。既にボイスレコーダー(音声記録装置)も回収しており、事故原因の解明はこれからとなる。
真相究明の遅れは、日本を含む航空業界全体に影響を与えかねないと航空アナリストの鳥海高太朗氏は指摘する。
「墜落したボーイング737型機は音速に近い速度で急降下している。ボーイング737-800型機は他のジェット機と同様に、通常なら急降下しないように設計されており、操縦士の極端な操縦や極めて異例な機能不全がなければ、そういった墜落状況になる可能性は低い。真相解明の遅れは航空業界全体に不安を与えかねません。
アメリカやヨーロッパ、日本など世界各国で幅広く使われている機体だけになおさらです。中国では同機のフライトを止めていますが、原因が分からないなか、中国からの情報が少ないのが気になります」
懸念されるのは、中国では過去、大規模事故の際に数々の“隠蔽工作”が行なわれてきたことだ。中国に詳しい評論家の宮崎正弘氏はこう話す。
「2011年の高速鉄道の追突脱線事故では、事故原因を突き止めるための現場検証も行なわれないまま、事故車両を埋めて隠そうとしたことが報じられました。昨年7月には、河南省で発生した豪雨洪水の死者・行方不明者数について、地方政府が過少報告していたと中国国務院が明らかにしています。
今回の件でも詳しい状況が分かってこないなか、中国の公表情報をどれだけ信じていいのか不安が残る。事故原因が分からないまま捜索が打ち切られてしまう可能性もないとは言い切れません」
日本の空の安全にも関わってくる問題だ。
※週刊ポスト2022年4月8・15日号