ウクライナ侵攻により、国際社会に「タガが外れた独裁者」の印象を植え付けたプーチン氏。ウクライナ側の激しい抵抗を受け、ゼレンスキー大統領を中心に展開される情報戦でも後れを取って追い詰められるプーチン氏だが、目下、米欧情報機関の最大の関心事は、同氏の「健康・精神状態」と伝えられる。現在69歳。権力と富を一手に握ったかつての“独裁者”たちが、奇しくも「69歳」で最期を迎えていることは、あまり知られていない。
リビアの元最高指導者、カダフィ大佐が没したのは2011年8月のことだった。「中東の狂犬」と呼ばれ、40年以上にわたり独裁体制を敷いた同氏だが、隣国・チュニジアのジャスミン革命の影響で求心力が低下。反カダフィ派の蜂起で政権崩壊、後に身柄を拘束され69歳で殺害された(死亡の経緯については諸説あり)。
イラクのサダム・フセイン元大統領が没したのも69歳の時。イラン・イラク戦争、湾岸戦争を経て、2001年の米同時多発テロで「悪の枢軸」と認定された。大量破壊兵器の保有を口実に2003年、米・ブッシュ政権が「イラク戦争」を開始。フセイン氏は戦犯として囚われ、刑場の露と消えた。
北朝鮮の最高指導者だった金正日・元総書記も同じく69歳で他界している。死因については「脳卒中」「心筋梗塞」など様々な報道があるが、真相は定かではない。カンボジア政権を掌握し、人口の4分の1の国民を虐殺したとされるポル・ポト氏も69歳で命を落とした。病死と言われているが、対立派閥による毒殺説も根強い。
独裁者と呼ばれた男たちが、奇しくも69歳で死没していることに奇妙な符合を感じざるを得ないが、医学博士の中原秀臣氏は「一概に共通項では語れない」と前置きしたうえで、こう指摘する。
「プーチン氏についてはパーキンソン病を患っているとの指摘があります。この病気は歩行障害のほか手足の震えや筋肉のこわばりが症状として現われることが多い。直近の映像を見ても、このような症状が顕著に見受けられます」
パーキンソン病が進行すると、ゆっくりと脳の神経細胞が死滅し、認知症の一因になるという。
「認知症を発症すれば、怒りっぽくなるなど性格変化を伴うことがある。現在のプーチン氏の言動に合致しているようにも思えます。一般的に“独裁者”と呼ばれる権力者は、孤独感に加え『いつ側近が寝返るか』という強迫観念に駆られ、常に緊張を強いられているケースが多い。長年のストレスが精神、体調面に影響を及ぼしている可能性があるでしょう」(中原氏)
ロシアと事実上の同盟関係にある中国の習近平・国家主席も今年6月に69歳の誕生日を迎える。超大国の権力者による「69歳の暴発」がないことを祈るばかりだ。