大相撲3月場所は大混戦だったが、懸念されるのは6日目から休場となった横綱・照ノ富士の状態だ。昨年の11月場所で新横綱から2場所連続優勝を飾ったが、一転して短命横綱の危機を迎えた。
「192センチ、184キロの巨体を支える両膝には3度もメスを入れている。今回の診断書には『左変形性膝関節症』とあり、膝がズレて骨が変形した状態だ。手術はしないようだが、容態が心配される」(若手親方)
ひとり横綱が引退危機となれば、協会の“看板”がいなくなる。そうした場合、横綱昇進のハードルが下がり、玉突き式に空席となる大関昇進の判断も甘くなっていく。
「照ノ富士にしても、昨年の5月場所での大関復帰の際、“関脇で3場所33勝”という昇進の目安は満たしていなかった(昇進の3場所前は小結)。ちょうど前場所に横綱・鶴竜が引退し、もうひとりの白鵬(現・間垣親方)も休場を繰り返していた」(担当記者)
その後、照ノ富士は優勝、準優勝で、“2場所連続優勝に準ずる”として横綱に昇進した。
「横綱が2人揃っていれば、もう1場所見送られる可能性もあっただろう。昇進基準に“準ずる”といった曖昧な表現があることで、協会側に裁量の余地が生まれる」(同前)
そうしたなかでは3月場所で大関昇進を果たしたばかりの御嶽海が横綱に最も近そうであり、前出の若手親方は「力士の所属する部屋によっても“追い風”の吹き方が変わってくる」と指摘する。
「主流派の部屋なら昇進の判断は甘くなりがち。角界の保守本流と位置づけられる出羽海一門の統帥部屋である出羽海部屋の御嶽海はかなり有利でしょう。一方で、たとえば関脇・阿炎は大関候補の一人だが、旧・貴乃花グループにいた錣山親方(元関脇・寺尾)の弟子だからハードルは高くなるのではないか。
将来が期待される三世力士に琴ノ若(前頭6)、王鵬(十両1)がいるが、同じ元横綱(琴櫻、大鵬)の孫でも、父親が新理事となった佐渡ヶ嶽親方(元関脇・琴ノ若)か、YouTubeで内幕暴露を繰り返す元関脇・貴闘力かで、将来の昇進の難しさが変わることもありそうだ」(同前)
横綱不在の土俵は寂しいが、かといって協会の思惑ひとつで最高位が安売りされても困るのだ。
※週刊ポスト2022年4月8・15日号