日本初の女性総理候補と目される政治家たちの本音を聞く連続インタビュー。第3弾に登場するのは、過去に何度も断念した自民党総裁選に昨年やっと出馬を果たした野田聖子・男女共同参画担当相(61)だ。「週刊ポスト」の新シリーズ《女性総理、誕生!》から飛び出したスピンアウト企画。第1弾(高市早苗氏)、第2弾(稲田朋美氏)に続き、ノンフィクションライターの常井健一氏が斬り込んだ。【全5回の第3回。第1回から読む】
──昨年の自民党総裁選では国会議員票が34票にとどまり、4人中最下位でした。あの結果はどのように受け止めましたか。
「『純粋にスゴイな』と思いますね。田崎史郎さん(政治ジャーナリスト)は、野田の議員票は20を割るだろうと言ってたの。私は特定派閥の応援はまったくなく、前代未聞のインディペンデントなんですよ。だから、『34人』は謎のままにして、墓場まで持っていくの。だって、派閥から造反して私の名前を書いてくれたわけだから」
──そのうちの20人は推薦人だから名前は明らかだけど、残り14人は誰なのかも把握されているのですね。
「それはわかっていても、言わないのが礼儀」
──「34」は票読み段階よりも増えました?
「増えた。だって、ホントにナイナイづくしで推薦人集めをしましたから。それまでお話ししたこともない人、たとえば、JA組織内議員の山田(俊男・参院議員)先生もそうで、私の思いを聞いてくれて一気に応援してくれたわけです。
だけど、私の出馬表明は告示の前日だったので、遅かったんですよね。スタートを切った時には、地方の党員票は他の陣営に取られちゃっていたから、もう行く先々で、遅いよ、もう入れちゃったよって。だから、そんな中では上出来だったかな」
──総裁選に出た際、閣僚名簿まで用意したようですね。
「ノートに書いたもので、半数は女性で、民間人の登用も考えていました。これは、中曽根(康弘)大勲位に『常に自分が総理になった時のシミュレーションをノートでしておけ』と昔教えられました。『岸田ノート』みたいな“聞く力”じゃなくて、野田聖子政権の組閣名簿です。
たとえば、外相を誰と書くじゃないですか。でも、不安要素が見えてくると『×』をつける。それをずっとやっていく。だから、自ずとその人の姿勢や発言を観察して、信用できるか考えています。かつ、委員会で総理の答弁を聞いて、自分だったらどう答弁をするか、シミュレーションしています」
二階俊博氏は“来る者拒まず”
──岸田内閣では首相臨時代理第2位。閣議では首相の右隣。高みに立つと、今までと違った景色が見えるものですか?
「いや、私自身は初当選から主義主張も変わらないので、どこに座っていても同じなんですけど、前まで麻生太郎さんのいらしたところに野田が座っているということで、周りがすごく変わります。役所の態度なんて最たるもので、景色のほうが変わった感じ。
でも、『今だけ』と冷静に受け止めています。郵政民営化の時、国民の9割が熱狂して、人が変わったように造反者を叩いた。そういう民族なんだって思っているので、高みに立とうと一歩引いて見ています」
──総裁選では高市さんと明暗が分かれました。議員票は114票で野田さんの3倍。その差の理由は、いったい何だったのでしょう?
「安倍(晋三)さんの必死さでしょう。安倍さんがどうしても河野太郎さんが嫌だという、その表われですよ。ホントは安倍さん自身が出たかったのかもしれませんが、まったく同じ主義主張でやり切れる高市さんを立てた。安倍さんにとっては理想通りの結果だったと思います。
一方の私は何度も総裁選に出ようとトライして、派閥の論理で引きずりおろされてきた。今回も女性が私一人だったら消去だったんです。高市さんの出馬効果で出られた。だから、私は高市さんにお礼を言わなきゃいけない」