まもなく5年間の任期を終えて退任する韓国の文在寅大統領。先の大統領選では、親日路線をアピールする野党候補の尹錫悦氏(国民の力)が接戦を制し、日韓関係に改善の兆しが見えるが、尹氏の前には文大統領の残す“負の遺産”が重くのしかかる。それが、文政権が進める軽空母建設計画だ。大韓金融新聞東京支局長の金賢氏が語る。
「国防力の強化を掲げる文政権が2019年8月にぶちあげたプランで、最新鋭ステルス戦闘機F35Bを搭載できる軽空母を建造しようというものです。日本がいずも型護衛艦の軽空母化を可能にする閣議決定の直後に発表しており、文政権の日本への対抗心が透けて見える計画でした」
韓国国防部は2022年から基本設計に着手し、2033年までに実戦配備する計画を発表しており、2兆300億ウォン(約2000億円)の建造費用を見込む。
だが、このプロジェクトは韓国内で不要論が噴出している。在韓ジャーナリストが語る。
「北への脅威に備えるなど表向きの目的はあるものの、韓国の排他的経済水域は日本の10分の1程度で、そもそも守るべき海域が少ない。
与党議員の中には竹島など島嶼群の領有権問題に備えるためだという声もありますが、日本を仮想敵国と想定するような、文政権の露骨な反日政策のために莫大な予算が計上されることに対し、反対意見が絶えないのです」
韓国の民放局SBSは今年1月、この空母計画について特集し、野党議員のハン・ギホ氏(国民の力)が番組内でこう述べた。
「我々が日本と戦うのですか? 日本が敵ですか? 敵だと言うなら理解できる。しかし、敵ではない相手を敵のように言いながら、彼らと戦うかのように(空母計画を)やっている」
新大統領の尹氏は、文氏の残した暴走計画を止めることができるか。
※週刊ポスト2022年4月8・15日号