日本初の女性総理候補と目される政治家たちの本音を聞く連続インタビュー。第3弾に登場するのは、過去に何度も断念した自民党総裁選に昨年やっと出馬を果たした野田聖子・男女共同参画担当相(61)だ。「週刊ポスト」の新シリーズ《女性総理、誕生!》から飛び出したスピンアウト企画。第1弾(高市早苗氏)、第2弾(稲田朋美氏)に続き、ノンフィクションライターの常井健一氏が斬り込んだ。【全5回の第4回。第1回から読む】
野中広務氏「結婚したら総理になれない」
──永田町の飲み会文化も、第1回で野田さんが指摘した「昭和」の名残りだと思いますが、いまどき会食することに政治的な効果はあるんですか。
「今までは私の武器でしたけど、最近はなくてもやれるといいなと思っています。なぜなら今はコロナ対策で、回数を極端に減らして、4人以下で、個室で、夜の8時までと決めています」
── 一方の高市早苗さんはもともと飲み会消極派。“ライバル”とはいえ、流儀はかなり異なりますね。
「歴代総理とけんかするのが私の立ち位置だったから、女性をライバル視するという発想がないし、慰め合っちゃうんですよ。高市さんも、辻元さんも、お互いあり得ない時代を歩んできたから、結構ひどい目に遭っている。
今は女性議員が必要だって言われて、いい意味でフォローの風が吹いているけど、私たちはアホみたいな犠牲を払って結婚できなかったり、子どもに恵まれなかったりしているじゃない。でも、今になって思えば、すべてが肥やしになっている」
──やはり結婚すると選挙に影響があるんですか。
「結婚で票が減ったかどうかわからないけど、前の夫(鶴保庸介・参院議員)と別れた次の選挙では票が伸びたね。地元の経営者との会合でも、『お帰り、聖子ちゃん!』って言われたもの(笑)。やっぱり支援者にとっては、『とられた』という感じだったのでしょう。
結婚で壁ができるのは男女一緒だと思いますが、野中広務先生には鶴保さんと結婚すると言いに行った時に、『結婚したら“普通の女”になるから、総理になれないぞ』ってクギを刺されました」
――なんか、少し前までのジャニーズみたい。結婚、出産と経験する前と後では、政治の仕事にも違いが出るものですか?
「違う、違う。政治では恫喝されたり、はめられたり、それは赤の他人がやることなので、スルーすれば済む。だけど、母ちゃんは子どもの命を背負っているから、生々しく大変ですよ。私の場合、障害がある子の母親となり、一人ひとりに違う人生があるということを、身をもって学びました。だから、子どもと一緒にいると政治の甘さがよくわかります。
政治家が大変だ、大変だって騒いでいることは、『え、どこが?』みたいな感じですね。政治家はよく、『命がけで~』という言葉を使うけれど、守るものができると軽々しく言えないはずです。政治は命がけの仕事? ウソだよって」
――高齢男性の政治家も評論家も出産どころか、子育てすらしないで「理想の家庭像」を語る。
「『政治家が一人前になるには子どもを捨てろ』と言う極めて保守的な人は、何も世間がわかっちゃいない。昭和のおじいさんや、子どもがいなかったり、子育てを終えた人の中に多いけど、現場感がないわけですよ」
――しかも、野田さんの場合、子どもが障害を持っているので、社会のバリアを日々実感している。
「そう。普通の子どもはどんどん成長して子育てが楽になるんだけど、うちの子の場合は一番大変な時のリアリティがずっと継続しています。だから、私は無理してでも息子と出会えてよかったと思う。画一的な昭和の家族観と、人それぞれの現実とのズレを知っているのが私の強みになった」
――40代の10年間を「妊活」に費やした。どうしてあそこまで頑張れたのですか。
「自分を実験台にして、何でもトコトンやるのが私の主義なので。母親になりたいとか、ウエットな気持ちよりも、解決策を科学的に追求したかった。結果、体外受精の費用の高さに辟易して、保険適用を提案することにつながって今年の4月1日から保険適用になる。かつてお金がなくてできなかった中間層の人たちも不妊治療が受けられる社会をつくれた。やっぱり、自分で経験したことを元に必要なことを法律や制度にすると、世の中への説得力が違いますね」