ロシアでは、熱狂的にプーチン大統領を支持する女性たちがいる。ロシア初の女性上院議長を務める与党「統一ロシア」のワレンチナ・マトヴィエンコ氏(72)は「現代ロシアの女帝」と称され、次期大統領候補とする見方もあった。今回のウクライナ侵攻でも上院議長として国会議決をスムーズに進め、プーチン氏を後方支援した。
異彩を放つのは、同じく統一ロシアのエレーナ・ミズーリナ下院議員(67)だ。
《プーチン大統領の精子をすべてのロシア人女性に郵送し、妊娠させましょう。大統領のような健児の遺伝子を全土で増殖できれば、ロシアの未来は永久に安泰です》
2014年のロシア議会で発したミズーリナ氏の衝撃の提案に議会は一時、騒然となった。ロシア政治が専門の中村逸郎・筑波大学教授が語る。
「他にもミズーリナ氏は、現代ロシア人の生殖活動の少なさに異を唱え、非生産的な自慰行為をしていないかカメラを設置して監視する法案を議会に提出したこともあります。逞しい子供を増やすため、健全な生殖活動を推進する狙いがあったと言われます」(中村氏)
2013年にも同性愛者を厳罰に処すように求めるなどしたミズーリナ氏は、強烈な大統領支持者だ。なぜ、プーチン氏はそのような層に支持されるのか。
「マッチョな保守層から熱烈な支持を受けているのは、ロシア正教を基盤に“強いロシア”を模索するプーチン氏の思想に共鳴しているからだと考えられます。プーチン氏の女性観は、“良妻賢母を求め、女は男に尽くす”という保守的なロシア正教からの影響がみられます。
実際にプーチン政権下では、2017年に家庭で夫が妻を殴っても初犯なら罪を免れる、通称『平手打ち法案』が成立しました。他にも同性婚を禁じる憲法の改正など、ロシアの伝統的な家父長的思想を推し進めているのです」(中村氏)
ロシアにおいても反戦デモが広がる一方、今なおプーチン氏を支持する層もある。それはプーチン氏が自らの思想と合致する者を重用してきたからでもあるのだろう。
※週刊ポスト2022年4月8・15日号