地域住民への地道な指導で“健康の底上げ”に成功してきたのは、医師・鎌田實氏だ。今、73歳となり「90歳になっても現役でいられる体を目指す」鎌田医師に、その秘訣や今の思いを聞いた。
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地域ぐるみの筋トレが長寿率を一気に高めた
健康づくりは長生きのため、と誰もが信じている。しかし、僕がスクワットをはじめとする筋トレを続けているのは、「生活の質」を高めるため。自分自身いつ死んでもいいと思っているけれど、生きている限りは元気でいたいのだ。
13年前にテレビ番組で黒柳徹子さんとご一緒したとき、僕が「スクワットがいいですよ」とお勧めしたら、彼女の返事は「あら、私やってるわよ」。ジャイアント馬場さんから教わったヒンズースクワットを、すでに日課とされていた。当時はまだスクワットをやっている女性が少なくて、歳を重ねても頭脳明晰な今日の徹子さんの姿を拝見すると「スクワット効果かな」と思えてくる。
長野県の諏訪に医師として赴任した48年前、ここは脳卒中多発地域で平均寿命も短かった。そこで、「減塩」「野菜とタンパク質をしっかり摂取」といった食生活指導のほか、「歩け歩け運動」や“貯金”ならぬ「“貯筋”運動」を推進。結果、長野は平均寿命日本一の県にまで上りつめた。
今では佐賀でも健康塾「がんばらない健康長寿実践塾」を開き、健康指導を行なっている。中高年を中心とした1000人ほどの塾生に向けて筋トレを勧めてきたところ、コロナ禍で外出が制限されたここ2年間でも、彼らの俊敏性、歩く速さ、認知機能はほとんど低下しなかった。
筋トレ継続のコツは「がんばらない」
年齢を重ねて体の機能が低下したり、ストレス解消のため過食気味になったりすると、人は動脈硬化になりやすい。動脈硬化は、慢性炎症のひとつ。もともとがんになりやすい遺伝子を持っていない人でも、慢性炎症ががんの発症や悪性化のリスクを高めることも。さらには認知症もやはり炎症との関係が指摘される。この炎症を防ぐために必要なのが、抗酸化作用のある野菜をいっぱい食べることと、筋肉運動なのだ。
野菜は、「いつものみそ汁にあれこれ入れて具沢山にする」「ミキサーにかけてジュースにして飲む」といったアイデアで、案外と簡単に摂取できる。肥満の人も、むやみにダイエットするよりは、まず筋トレを。はじめはさほど体重は減らないが、時間をかければゆっくりと脂肪が筋肉に変わっていく。かくいう僕も食べることがものすごく好き。でも、修行僧のような食事制限はしない。以前は体重が80kgだったのが、10年以上前から筋トレに力を入れてみたら、今はベスト体重の72kgを完全にキープできている。
筋トレのコツは、がんばらないこと。がんばりすぎると続かない。たとえばテレビを観ていて、コマーシャルになったら別記事で紹介する運動をひとつ選んでやってみて。僕の運動はどれも3分以内で終わるからちょうどいい。