椎間板変性が進行すると慢性疼痛に悩まされることがある。その椎間板性慢性疼痛は高齢者以外にアスリートや過重労働の若い世代にも多い。昨年、椎間板性慢性疼痛に対し、多血小板血漿(PRP)上清を椎間板に直接注射する臨床試験が行なわれ、有効性が確認された。PRPは組織修復能力に優れており、抗炎症作用で疼痛緩和に導いている。
現在、医療分野ではPRPを利用した再生治療が行なわれている。
PRPとは血液にある血漿の一部で、血小板の成長因子が高濃度に凝集され、組織修復能力に優れている。そこで日本人に多い慢性腰痛の中でも、特に椎間板性慢性疼痛の治療にPRPを利用した研究が進行中だ。なにせ椎間板が変性するとヘルニアになり、悪化すると、すべり症にもなる。多くの症例は痛みを伴い、日常生活に支障をきたす。
椎間板性慢性疼痛は高齢者の疾患と思われがちだが、アスリートや過重労働の若い世代に多い。患者の約7割に遺伝的要因があり、そこにスポーツや過重労働の環境因子が加わることでも発症する。
三重大学大学院運動器外科の明田浩司講師に聞く。
「椎間板性慢性疼痛は年齢を問わず、どの世代でも発症しますが、このPRP治療は自己血を使うので安全な治療といえます。PRPは血液を遠心分離して取り出しますが、私の場合はPRPを体外で活性化させ、さらに遠心分離した“PRP上清”を抽出して使用します」
椎間板性慢性疼痛はMRIなどの画像で確認できるが、変性箇所(椎間板が狭くなっている箇所など)すべてで痛みが発生するわけではないので、まずは椎間板の変性箇所に局所麻酔と造影剤を注入して検査する。画像を確認しながら、変性箇所ひとつひとつに局所麻酔を打ち、痛みが消えたかどうか患者に確認。つまり、疼痛が消えた箇所が痛みの発生源と特定することができるため、その変性箇所に直接、PRP上清の注射を行なう。