プロ野球の2022年シーズン開幕10試合で1勝9敗と、日本ハムの“ビッグボス”こと新庄剛志監督の勢いは一気に失速したかに見える。そうしたなかで浮上したのが「シーズン100敗」騒動だった。
阪神OBの田尾安志氏、岡義朗氏、藪恵壹氏の3人がYouTubeの「TAO CHANNEL」で日本ハムを6位と予想。そこでのやり取りに、新庄氏が自身のインスタグラムで噛みついたのだ。藪氏が「100敗してもいいくらいですね」と発言したことなどに対し、〈笑いながら~この御三方達の性格がなんだか可哀想だなって思いました〉などと怒り顔の絵文字付きで投稿。
投稿があった3月29日は、本拠地・札幌ドームでの開幕戦だった。エースの上沢直之を登板させるも、西武に0対4と完敗。その後もチームは黒星を重ね、皮肉にも本当に100敗が心配されるペースの星勘定だ。
プロ野球の歴史上、100敗以上は1961年の近鉄バファロー(36勝103敗1分)のみ。21世紀に入ってからのワースト記録は、騒動の発端の一人である田尾氏が率いた2005年の楽天だ。チーム設立1年目だった楽天の成績は38勝97敗1分。その田尾氏に改めて「100敗」について聞いた。
「“新庄頑張れ”というスタンスなので、100敗しろなんて思っていません。動画は100敗のところだけが独り歩きしてしまって……。日本ハムの100敗はないですよ。栗山英樹が10年間率いたチームです。楽天の1年目のような寄せ集めではありませんから」
当時、消滅する近鉄の選手をオリックスが優先的に吸収していくかたちとなり、新設された楽天の戦力はかなり見劣りしていた。田尾氏が続ける。
「前年、レギュラーだったのは磯部(公一)だけ。先発ローテーションピッチャーは岩隈(久志)しかいなかった。プロのレベルのチームじゃなかったんです。開幕戦こそ岩隈が投げて3対1で勝ちましたが、2戦目は0対26で1安打に抑えられた。11連敗が2度あったし、4~5連敗はしょっちゅうだった。100敗しかねないチームとは、そういうチームです。日本ハムはそんなことはない」
どんなに負けが込んでも、プロ同士の戦いで1シーズンに100敗するのは、逆にハードルが高いという指摘である。
「ただ、新庄は就任会見で“今年は優勝なんか目指しません”と言っていましたが、あれは言ってほしくなかった。僕も100%最下位になるだろうというチームの監督をしましたが、“優勝を目指して頑張る”という言い方をした。そういう気持ちがないとお金を払って球場に来てくれるファンに失礼だと思います。おまけに“後半になってそういう(優勝が争える)ポジションにいたら頑張る”というのは、ちょっと甘いなと思う。日替わりオーダーも戦力を見定めるためにやっているとすれば、ちょっと寂しい。開幕までにしっかりと勉強しておかないといけないでしょう」(田尾氏)
新庄氏のパフォーマンスに対して、賞賛ばかりではなくなってきている。
※週刊ポスト2022年4月22日号