決死の覚悟で髷を切る演技で、トレンド上位に
物語も中盤にさしかかり、いよいよ緊迫感が高まっているNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』。人気脚本家・三谷幸喜氏が描く“武士の時代”黎明期を生きる人々の熱い生きざまが、放映のたびに大きな反響を呼んでいる。
主演の小栗旬をはじめ、キャストはほぼ“三谷組”と言われる常連俳優たち。その中にあって初登場となり注目されている俳優が、4月2日放送の第13回から出演している今井兼平役の町田悠宇(33)だ。木曽義仲(青木崇高・42)の側で忠義を尽くす無骨な武士を体現している。
町田悠宇といえば、昨年のNHK大河ドラマ『青天を衝け』の断髪シーンが話題になった水戸藩士・菊池平八郎を演じた役者、といえばわかる人も多いだろう。ヨーロッパへ渡った渋沢栄一(吉沢亮)らが、洋装に合わせるためむしろ嬉々として髷を落とすのに対し、菊地は“辞世の句”まで詠み、まるで切腹のような悲壮な覚悟で髷を落とす。その熱演はネットでも大きな反響を呼んだ。
そして、『鎌倉殿の13人』では木曽義仲の側近、今井兼平を演じている。義仲との絆や武士としての誇りを体現する逸話も多く、歴史マニアの間でも人気が高いので、登場シーンを心待ちにしている人も多いだろう。
大河ドラマで2クール続けて、“武士の中の武士”役に抜擢された町田悠宇とは、いったいどんな俳優なのだろうか。町田がインタビューに応えてくれた。
前職は「航空整備士」。運命を変えたシンガポール出向の辞令
町田悠宇は福岡県出身で、前職はなんと航空整備士。子供の頃から飛行機が大好きで、整備士は憧れの職業だったが、ある時シンガポールへの転勤を命じられたことで離職を決意する。
「山育ちの田舎者なので、大きな変化が苦手なんです(苦笑)。やりがいのある仕事だったので辞める時は悩みましたが、外国に住むなんて、当時は考えられなかった。あの辞令がなかったら、今でも九州で整備士をしていたと思います」(以下カッコ内、町田)
無職となり、「自分は何がやりたいか」と考えた時に浮かんだのが、芸能界への挑戦だった。整備士とは180度違う世界への転身宣言に周囲は驚いたが、
「今思うと、会社員時代も、忘年会や結婚式の余興でめちゃめちゃ張り切って盛りあげていました。人を楽しませることが根本的に好きだったんですね。そういうことを仕事にできたらいいな、というふんわりした動機でした」
芸能界に何の伝手もないので、とりあえず知り合いだったモデル事務所の社長に相談した。それがきっかけで、モデル事務所に所属。だがモデルの仕事を与えられると思っていた彼に命じられたのは、モデルのスカウトだった。