古典を女性目線の話にしたり、主人公の奥さん目線で語ったり……最近、女流落語家の活躍が目覚ましい。『笑点』(日本テレビ系)でおなじみの落語家・林家たい平(57才)は、その変化を、次のように語る。
「落語の登場人物はどうしても男性が多いから、これまでの女性噺家は、頑張って“男”を演じていた部分があったかなと思うんです。
ところが、いまはあえてそうせず、自然体で落語と向き合っている噺家が多く、お客さん側も自然に受け入れるようになってきたと感じますね。
以前は女性のせりふが多い演目を選ぶことも多かったけれど、本来は男性しか出てこない演目に女性を登場させてすごく面白くしている噺家もいます。男の噺家にはない発想の転換がありますよね」
その過程には、落語界の意識の変化もあるという。
「ひと昔前なら『女性に落語は難しい』と、弟子入りを認めない師匠がたも多かったけれど、ずいぶん変わりました。それはやっぱり、彼女たちが真摯に落語に打ち込む姿を目の当たりにしていることが大きい。とにかく、落語家を目指す女性たちは、落語が好きでたまらない人ばかり。圧倒的な男社会にあえて飛び込んでくる時点で、彼女たちの覚悟は相当なものだと思う。
明確な目標があるから、つらい修業も乗り越えられる強い気持ちがある。テレビのADさんもそうだけど、女性の方が男性より根性があるのよ、男はみんなやめちゃうもん(笑い)」(たい平)
演じ手だけでなく女性の聴き手も増えている。
「これまでも落語好きの女性はたくさんいらっしゃいましたが、二ツ目の落語ユニット『成金』【*】のブレークで、新たな女性客が増え、寄席の半分以上が女性だったこともありました」と言うのは、落語芸術協会の桂奈保子さんだ。たい平によると「平日の落語会になると、6〜7割は女性ということもある」という。
【*成金は、2013年に二ツ目(真打の下の階級)の落語家・講談師11人で結成。毎週金曜の夜に落語会を開き、話題に。メンバーの神田伯山(当時松之丞)、柳亭小痴楽(こちらく)、桂宮治などのスターを生み出した。2019年、小痴楽が真打に昇進したことで解散した】
取材・文/佐藤有栄
※女性セブン2022年4月21日号