参議院選後の内閣改造・党人事で高市早苗・政調会長の更迭が確実視されている。安倍晋三・元首相の後ろ盾を失いつつあることが、その背景にあるという。総裁選であれほど高市氏をあれほど全面支援しながら、安倍氏は高市氏を安倍派に受け入れようとはしない。それは安倍氏が自民党最大派閥「清和政策研究会」(現・安倍派)の会長に就任(昨年11月)してから顕著になった。
もともと高市氏は安倍氏と同じ清和会に所属していた。だが、2012年の総裁選に当時の派閥会長・町村信孝氏と返り咲きを目指す安倍氏が出馬すると、高市氏は派閥を退会して安倍氏を応援し、政権復帰に貢献した。それだけに安倍氏が会長に就任すれば、たとえ派内の風当たりが強くても、自分も派閥に迎えられると考えるのは人情だろう。
だが、そうはならなかった。安倍派ベテランはこう話す。
「派内には下村博文・会長代理をはじめ、萩生田光一・経産相、世耕弘成・参院幹事長、福田達夫・総務会長、稲田朋美・事務局長などポスト岸田を目指す総裁候補が綺羅星の如く並んでいる。そこに総裁選出馬の実績がある高市さんが出戻ってきたら、総裁候補の地位を奪われかねない。だから派閥復帰には派内の反対が強い」
一方、高市氏の派閥復帰を最も嫌がっているのは安倍氏自身だという指摘もある。政治ジャーナリスト・田中良紹氏が語る。
「安倍氏は本心では再々登板を諦めていないと思うし、そうならなくても最大派閥を足場にキングメーカーの地位を保ちたい。そのためには、派内に突出した総裁候補がいると都合が悪い。昨年の総裁選で側近の下村氏が出馬に意欲を見せたときも、安倍氏は応援しなかったし、結局、出馬断念に追い込まれた。安倍氏が総裁選で高市氏を推したのは無派閥だからです。派閥の議員に自ら電話を掛けて高市支援を要請したのも、派内から次のリーダーが出現するのを防ぐため。キングメーカーは複数の総裁カードを持つほど力を発揮できるが、カードは弱いほうがいい。そうした行動原理からすれば、安倍氏が高市氏を自分の派閥に入れて力を持たせるはずがない」
総裁選で泡沫候補と見られていた高市氏に大きな票を与えたのは間違いなく安倍氏の力だが、その高市氏が力をつけてくると、安倍氏には“邪魔者”に見えてきたのだ。