『女性セブン』に連載されていた『これを愛と呼ぶのなら』(作・都陽子)の完結編となる第2巻が発売された。ラブホテルを訪れる男女の人間模様を描いた第1巻から一転、ラブホテルで働く綾子が、夫の不倫、そしてDVで追い詰められていく様が緊迫感をもって描かれている。果たして、妻は、夫の不倫やDVにどう対峙したらよいか。本作をテキストに、3人のエキスパートが解決策を探る。
『これを愛と呼ぶのなら』はDV加害者と被害者の心理描写、特に、被害者が夫の不倫やDVに直面して戸惑い、怯え、思考停止に陥っていく様子が克明に描かれている。
壊れた夫婦関係の相談を受ける機会の多い3名の専門家は本作を読んで異口同音にこう話した。
「実際、綾子のような女性が相談に訪れることも少なくありません」
彼らは、そうした悩める女性たちにどのようなアドバイスをしているのだろうか。物語の重要ポイントに焦点を当てながら、話を聞いた。
夫の不倫に気づいたらまずすべきは証拠集め
主人公の専業主婦・有富綾子(以下、綾子)は、結婚して19年間、デザイン会社を営む夫・隆一と大学生の一人娘・美知を支えてきた。
ある日、綾子は夫の上着からラブホテルのレシートを発見する。以前から不倫を疑っていた綾子が法律事務所に相談に訪れると、興信所を使って証拠を取ることをすすめられる。しかし、綾子が取った行動は、夫に内緒で当該ラブホテルで働き、夫の不倫現場をその目で確かめることだった。
夫の不倫に気づいたとき、どうするのがいちばんいいのだろうか。夫婦問題カウンセラーの高草木陽光さんはこう語る。
「離婚するかしないか、慰謝料を請求するかしないかは別として、綾子のようにまず不倫の証拠を掴もうと行動に移すことは非常に大事です。離婚を望んでいない場合でも、証拠があれば周囲に助けを求めたとき、支援者はより親身になり、スムーズに動いてくれますから。
とはいえ、綾子のように浮気調査を素人が行うのはおすすめできません。尾行や待ち伏せに気づかれて失敗しやすいだけでなく、証拠隠しをされたり報復されたりして泥沼化するリスクが高いですから。確実に証拠を押さえたいなら、やはり興信所などのプロに任せるべきです」
家庭問題を多く扱う弁護士の森公任さんは、離婚を望む際にも証拠は有利になると語ったうえで、こう指摘する。
「必ずしもラブホテルに出入りする現場写真ばかりが重要とは限りません。例えば『愛しているよ』『先週末の旅行は2人きりで過ごせて楽しかった』といった男女関係が明白な文言が入ったメールやLINEなどの画面写真でも不倫と認められるケースがあります」
同居している夫のメールやLINEを勝手に見ることは不法行為にならないか心配になるが、「問題ありません」と森さん。ただし、離婚の可否と不倫の慰謝料については、誤解している人が多いという。