新型コロナウイルス対応のまん延防止等重点措置が解除され、プロ野球は3年ぶりに観客数の制限がなくなった。球場に詰めかけたファンは球場内に流れる選手の応援歌に合わせ、手拍子で応援している。ただ、感染の収束に伴って、球場での応援が“元通り”になるかを巡っては、様々な議論があるようだ。
各球場では大声での応援、応援歌などの歌唱は感染予防対策の観点から禁止が呼びかけられているが、試合が白熱すると思わずどよめきの声が漏れることも。大音量のトランペットに合わせて、ファンが大声援を送る日常が戻るまでにはもう少し時間がかかりそうだ。
鳴り物入りの応援の復活を楽しみにしている野球ファンも多いだろう。相手選手がたじろぐほどの阪神ファンの熱狂的な応援、広島ファンの「スクワット応援」、ロッテファンの一糸乱れぬ大声援と手拍子は球場の風物詩になっている。米国にない日本の応援歌の文化を気に入る助っ人外国人も多かった。
ただ、鳴り物入りの応援に関しては選手からも否定的な声が少なくない。セ・リーグのある選手はこう話す。
「大声援で応援してくれるのはありがたいですよ。ただ、外野を守っている時に他の選手の声がかき消されて聞こえないんです。数年前の交流戦でロッテと対戦した時は、ロッテファンの声援が凄くてびっくりしました。ZOZOマリンは風が強く吹き荒れているので打球の落下地点を予測するのが難しい上に、大声援とトランペットの音で他の球場以上に選手の声が全然聞こえない。フライで衝突しそうになった時は怖かったですね。
コロナ禍で無観客になっていた期間は守備が本当に楽になりました。もちろん、大観衆の中でプレーしたほうがモチベーションは上がります。でも、応援歌がないと、他の選手の声もはっきり聞こえるので守備の連携が取りやすいのは間違いありません」
選手同士の交錯は選手生命を脅かしかねない。3月30日のロッテVSソフトバンク戦(ZOZOマリン)では9回にロッテ・福田光輝の左中間に飛んだ打球を追いかけた左翼・栗原陵矢と中堅・上林誠知が交錯。左膝付近を強打した栗原はそのまま倒れ込み、担架で運ばれた。栗原は「左膝前十字靱帯断裂」「左外側半月板損傷の疑い」と病院で診断され、全治は未定。今季中の復帰は絶望的な状況だ。
「栗原と上林の交錯は鳴り物応援がないなかでのものですが、守備で選手同士が激突するリスクを少しでも減らすためにも、スタンドからの応援については見直しても良いかもしれません。一昔前は相手守備の落球を誘発するために応援団がトランペットを鳴らし続けるケースも珍しくなかった。見ていて気持ち良いものではないですし、選手がパフォーマンスを発揮する機会を妨害しているようにも感じてしまう」(スポーツ紙デスク)
海の向こうではエンゼルス・大谷翔平、カブス・鈴木誠也、パイレーツ・筒香嘉智と日本人選手たちが活躍しているが、メジャーの球場は応援歌は流れず、スタンドに詰めかけたファンは一球一球を食い入るように見つめ、良いプレーに称賛の拍手を送っている。
日本も応援スタイルを模索する時期に差し掛かっているのかもしれない。