2年連続で米音楽界最高峰の栄誉とされるグラミー賞にノミネートされた韓国発のアイドルグループ・BTS(防弾少年団)。惜しくも受賞は逃したものの、4月3日(現地時間)の受賞式では『007』を彷彿とさせるクールなパフォーマンスを披露し世界中の熱狂的なBTSファンたち、通称「ARMY」を喜ばせた。世界的アイドルとなった彼らだが、母国・韓国では新政権の発足を前に、兵役を巡る議論が再燃している。
4月9日、BTSの所属事務所HYBEのイ・ジンヒョンCCOは関係者との懇談会で「アーティストの兵役関連事案が世界的に関心事であるだけに、兵役法改正案が今回の国会で早めに結論が出てほしいと思う」と発言。韓国政府に結論を急ぐよう促した。
30歳までの入隊期限の延長が認められているメンバー最年長者のJINは今年12月にいよいよ満30歳を迎え、このまま法改正がなければ年内に入隊となる。そのため、政府の対応が事務所や本人のみならず、国民的関心事となっているのだ。
韓国で実施された最新の世論調査によると、芸能人の兵役については「兵役免除(特例対象に含まなければならない)」が59%で「特例対象に含んではいけない」が33%と、特例対象とすることに賛成する意見が上回る結果となった。しかし「賛成多数だから兵役免除」という流れに持っていくのは簡単ではないと、在韓ジャーナリストの藤原修平氏が話す。
「世論調査の結果に基づいて単純に考えると、5月に発足する尹錫悦(ユン・ソギョル)新政権がBTSの兵役免除のために法改正をするのではないかという見方もできますが、彼らをどういう資格で免除するのかが問題になってくるでしょう。
兵役法では19歳以上の男性に兵役義務がありますが、国際スポーツ大会や音楽コンクールで優秀な成績をあげた人は、3週間の基礎軍事訓練や、社会的弱者を対象とする活動などに参加することで、兵役が事実上免除されるなどの規定があります。しかしK-POPなどの大衆文化は今のところその規定の対象外です。グラミー賞にノミネートされたとはいえ受賞には至っていないBTSを、実質的な兵役免除となる代替服務をどういう基準で認めるのかとなると、結構ハードルの高い問題でもあります」