中国の上海市では、習近平指導部の新型コロナウイルス封じ込めの「ゼロコロナ政策」による都市封鎖で、食糧不足が深刻化している。また病床不足などの医療崩壊で、重度の慢性疾患を持つ患者らが治療を受けられずに死亡するケースが続出しており、民衆の不満が極限まで高まっていることが分かった。ネット上では「上海は死の街になった」「習近平指導部のゼロコロナ政策によって殺される」などとの書き込みも現れている。米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」が報じた。
上海市トップの李強中国共産党上海市委員会書記は4月中旬、市内の集合住宅を視察していたところ、女性3人に囲まれ、「食べるものがない。市からは米しか配給されず、野菜も肉も魚もない、毎日ご飯しか食べられない」などと苦情をぶつけられた。また、車いすの女性は李氏を指差しして、大声で「あなたは国家に対して犯罪を犯した」などと大声で罵る場面もあった。
これに対して、李氏は彼女らに頭を下げて「みなさんの声をまとめて、上層部に報告します」と答えるのみだったという。
一方、SNS上では慢性の持病があった70代の父を持つ男性が「父は通常なら週に3回の透析が必要だが、この騒ぎで7日間も透析を受けることができず、その挙句に昨日亡くなってしまいました。ゼロコロナ政策で、都市封鎖をするのならば、病人の治療を継続する手配を整えてからにしてほしい」などと訴えていた。
このほかにも、がん患者だった70代の女性の娘は「母は本当ならば1週間前に手術を受ける予定だったが、上海市のロックダウンで、手術が延期され、そのまま亡くなってしまった。その間、市政府に電話で窮状を訴えても、何も聞いてくれませんでした」と書いている。
このような状況は上海市ばかりでなく、上海市近隣の浙江省や江蘇省などにも波及している。ネット上では「政府はゼロコロナ政策で、まもなく都市封鎖を実施する」とのうわさが広がり、食料品を買いだめするため市民がスーパーマーケットに押し寄せる動画が投稿されている。
また、中国南部の大都市である広州市では感染拡大防止策として、4月11日から小中高校の1週間の臨時休校措置をとったほか、市民には市外への移動を制限したことで、市民の間では「ロックダウンの恐れがある」として不安が高まっている。これらの地方政府は「生活用物資は十分あるので、冷静に対応してほしい」と呼びかけているが、ネット上では「政府の言ったことを信じる人はだれもいないだろう」との声が出ている。
また、台湾の中央通信社によると、上海などのロックダウンなどの影響で、中国各地の高速道路で立ち往生しているドライバーが一時約3000万人以上に上ったという。これは中国の貨物・物流産業の約76%を占めており、中国の物流網もマヒ状態に陥っていると伝えている。