自民党内ではウクライナ情勢の泥沼化と3か月後に迫った参院選シフトで反岸田勢力が表だって首相を批判できないことから「無風政局」と呼ばれる。そうした中、「政界の一言居士」として知られる伊吹文明・元衆院議長が反主流派の一角、二階派の例会(4月14日)で大いに吠えた。同派の最高顧問を務めてきた伊吹氏は、昨年の総選挙で引退した後も、依然、ご意見番として派内に影響力を持つ。
「国会で決めたことに、国会議員が公然とそれと違うことを国会を通さず主張するのは、国会の権威を著しく弱める。低下させると考えないといけない。国会の権威を守るため、決めたことを国会議員がひっくり返すようなこと言ってはいかん」
そう切り出した伊吹氏がまず槍玉に挙げたのが、岸田文雄・首相と茂木敏充・幹事長、公明党が主導した年金生活者への5000円給付が白紙撤回された問題だ。
「1つ具体的な例を挙げると、年金生活者というか65歳(以上)の連中にみんな5000円あげる話があって、みっともないっていうんで立ち消えになった。これは平成16年に年金法を改正し、それまでは物価が上がり経済が成長したりすると年金はどんどん改定していた。同時に物価が下がったり経済がマイナス成長になったりしても年金改定せず減らさなかった。これではいくらなんでも若い世代の将来の年金の基盤を危なくするとして物価スライドにマクロ経済スライド方式を入れた。物価が下がったときは年金世代も我慢しましょうと。
(ところが)今回物価スライドで7月、ちょうど参議院選挙の頃に0.2%年金が下がる。下がる部分をモデルケースで夫婦2人で計算すると 1万500円になる。だから夫婦2人で割ると(1人あたり)5000円ずつあげるんだという論理。こんなことをやりだしたら国会の法律は一体どうなるんだ。それを自民党の大幹部が主張するようなときは、少なくとも政府がやろうとしたときには、与党はたしなめなくちゃいけない。与党が旗を振っちゃいかん」