梨元勝氏(享年65)が2010年に死去し、井上公造氏(65)が今年3月に引退するなど、芸能レポーターという職業は、もはや化石となりつつある。しかし、現場主義を貫く彼あ彼女らがいたからこそ伝わるものもあった。ベテラン芸能レポーターの東海林のり子氏(87)と前田忠明氏(80)が、その仕事の意義について振り返った。今も昔も変わらない、レポーターにとって大切なこととは──。【全4回の第4回。第1回から読む】
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前田:あの頃はタレントの結婚や離婚を取り上げると、視聴率がグッと上がったんだよね。
東海林:芸能人の結婚式をゴールデンタイムで中継していたもんね。
前田:松田聖子が郷ひろみとの破局を公表した時、「もし今度生まれ変わってきた時は絶対に一緒になろうね」と話したと言ったじゃない?
東海林:あったわね。
前田:その5か月後、聖子が神田正輝と結婚した。その会見で、レポーターの須藤甚一郎が「聖子さん、生まれ変わってもまた一緒になりたいですか?」と聞いていたな。今じゃ、叩かれそうだけど。当時の芸能レポーターはやり過ぎな面が多々あったよ。
東海林:私も、事件の犯人の住むマンションの前でカメラを回して、「8階の右から2番目の部屋です。ベランダの木が揺れてます」と伝えていたし、近所もよく取材したわ。
前田:離婚しそうなタレントの家の周辺で聞き込みすると、よくしゃべってくれるんだよ。
東海林:昔は携帯電話がないから、田舎に行くと誰かご近所さんの家の電話を押さえてたわね(笑)。
前田:親しくなって、家へ上がり込んで使わせてもらっていた。向こうも貸してくれたんだよ、レポーターを知ってるからね。
東海林:時には、庭に勝手に入って怒られたこともあった。本当にいけないことだし、不法侵入なんだけど、深く知りたい気持ちが上回っちゃったの。
前田:伝えたいんだよね。そしたら、「ワイドショーはロクなもんじゃない」って言われるようになった。その通りだよ。個人情報保護法を作る契機になったと思うよ。
東海林:直撃だけじゃなくて、会見もほとんどなくなったわよね。たまにあるけど、レポーターもいつも取材しているわけじゃないから、良い質問ができない。
前田:神田沙也加さんが亡くなった時、聖子と正輝に「今のお気持ちは?」はないよな。
東海林:昔は若いレポーターが会見で余計なことを聞くと、梨元さんや忠ちゃんが叱ってたもんね。
前田:やっぱり、聞いて良いことと悪いことがあるんですよ。その一線は引かないといけない。