日本維新の会から比例代表に出馬するのが女子マラソンの元エース選手・松野明美氏(53)だ。
「私を選んでください。負けませんから」
30年前、バルセロナ五輪の代表選考前にそう訴えたが、最終的に有森裕子選手(バルセロナ銀メダル)が選ばれ、泣き崩れたという彼女のエピソードは強烈だった。
その松野氏は引退後、コーチやスポーツキャスターなどを務めた後、「障碍者・児の住みやすい街にしたい」と公約を掲げて地元の熊本市議に無所属で当選、熊本県議に転じ、前回県議選ではトップ当選するなど県民からの支持は高い。
だが、維新からの参院選出馬までには紆余曲折があった。立憲民主党の選対幹部が語る。
「松野さんは参院選の熊本選挙区にうちから出馬する話が進んでいたんです。ところが、昨年の総選挙で立憲民主が議席を減らしたことを不安に思ったのか、出馬を辞退してきた。それが維新から比例代表に出馬すると聞いてびっくりしました」
総選挙で敗北した立憲民主より、躍進した維新のほうが勢いがあると判断したのはなかなかの政治的嗅覚の持ち主だ。松野氏の話だ。
「立憲民主党からは、参院選の選挙区でどうですかというお誘いがあった。私は無所属でやってきた人間で、自分の信念を通すのは、今の立憲民主党では難しいかなと思っていた。過去には自民党からも県連に入らないかとお誘いを受けたのですが、自民党はちょっと違うんですよね。説明しにくいんですが。
維新の会は、エネルギッシュで、『いいなあ』と思っていた。立憲民主党から声がかかり悩んでいる時に、維新の会の馬場(伸幸)共同代表(当時幹事長)がツイッターで『立憲が松野氏に出馬要請』の記事を引用し、『松野さーん、辞めといたほうがエエですよ~皆んな後悔してますよ~』とつぶやかれた。それを見て、私から立候補のお願いをさせていただきました」
国政進出レースでは、スタート前に立憲民主から維新へと“コース変更”したようだ。今度こそ国民の代表に選ばれるか。
※週刊ポスト2022年4月29日号