芸能

『マイファミリー』の多部未華子 「母となった」存在感が際立っている

わたナギは大ヒット

大卒、マイペースでも知られる

 俳優はイメージをまとう仕事、視聴者にとっては私生活も気になるものだ。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が分析した。

 * * *
 ゲーム業界の新時代を切り拓くカリスマ経営者・鳴沢温人(二宮和也)とその妻・未知留(多部未華子)。鎌倉に豪邸を構えるセレブだが実は冷え切った仮面夫婦。娘を誘拐されてしまった二人は、もう一度力をあわせて犯人と対峙することに。

 犯人から届く指示は「5億円用意してください」「警察を完全に排除するように」。困惑した二人は犯人と交渉しようとネットニュースで会見を開くが……日曜劇場『マイファミリー』(TBS系日曜午後9時)。冒頭からめくるめく展開で、スピード感に引き込まれてしまいました。緊張感のある引き締まった画面となっている理由は……。

 まず主役の二宮和也・多部未華子、二人の演技の力が光っています。役にしっかりと集中し成りきっている。特に、仮面夫婦の二人の間に流れる微妙な空気感がリアルに伝わってくる。

 妻から気持ちが離れた夫の、ちょっとクタビレた感じ、投げやりな感じ、しかし少しずつ気持ちが戻っていく感じ……冷たさと温かさの「あわい」を二宮さんが絶妙に演じています。

 相手への反発と夫婦としての親密。その間の揺れ具合。妻が着替えようとすると、見てはいけないもののようにさっと視線をかわす夫。「こういう時ってこういう反応をするよね」と、視聴者を納得させる些細なしぐさにリアリティが宿っています。

 娘が誘拐されて風呂に入る余裕もない二人が、体をぬぐうボディシートを分け合うシーンも実に細かくて巧い。最初は躊躇していた妻が、夫に手を伸ばして背中を拭く。何ともいえない官能感が夫婦の間に漂っている。セリフではなく、二人の役者の表現の力が微妙な空気感を伝えています。

 そして演出の力。捜査1課・葛城刑事役の玉木宏、鳴沢のビジネスパートナー・立脇香菜子役の高橋メアリージュン。友人の三輪を演じる賀来賢人、東堂役の濱田岳とそれぞれ役者の個性を際立たせ、誰もが無くてはならない存在としてドラマ世界のパーツにはまっています。

 脚本もいい。時代を的確に捉え説明的なセリフは少なく、事件を通して人間の姿を描き出そうとしています。ゾっとするような無機質な仕掛けも、効果的。

「みの しろきんが さきです」
「した がわなければ ころします」

 スマホから届く犯人の声は妙に明るく抑揚がなくて乾いた機械音。単語が持っている深刻な意味あいと、かけ離れた声色と。二つの落差がまさしく不気味を演出しています。

 というように役者、演出、脚本の三要素がバランス良く揃って秀作になりそうな予感。中でも敢えて、「変化」について注目点を挙げるとすれば多部未華子さんでしょう。

関連記事

トピックス

『激レアさんを連れてきた。』に出演するオードリー・若林正恭と弘中綾香アナウンサー
「絶対にネタ切れしない」「地上波に流せない人もいる」『激レアさんを連れてきた。』演出・舟橋政宏が明かす「番組を面白くする“唯一の心構え”」【連載・てれびのスキマ「テレビの冒険者たち」】
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《大谷翔平が帰宅直後にSNS投稿》真美子さんが「ゆったりニットの部屋着」に込めた“こだわり”と、義母のサポートを受ける“三世代子育て”の居心地
NEWSポストセブン
現場には規制線がはられ、物々しい雰囲気だった
《中野区・刃物切りつけ》「ウワーーーーー!!」「殺される、許して!」“ヒゲ面の上裸男”が女性に馬乗りで……近隣住民が目撃した“恐怖の一幕”
NEWSポストセブン
シンガポールの元人気俳優が性被害を与えたとして逮捕された(Instagram/画像はイメージです)
避妊具拒否、ビール持参で、体調不良の15歳少女を襲った…シンガポール元トップ俳優(35)に実刑判決、母親は「初めての相手は、本当に彼女を愛してくれる人であるべきだった」
NEWSポストセブン
「ミスタープロ野球」として広く国民に親しまれた長嶋茂雄さん(時事通信フォト)
《“ミスター”長嶋茂雄さん逝去》次女・三奈が小走りで…看病で見せていた“父娘の絆”「楽しそうにしている父を見るのが私はすごくうれしくて」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ犯から殺人犯に》「生きてたら、こっちの主張もせんと」八田與一容疑者の祖父が明かしていた”事件当日の様子”「コロナ後遺症でうまく動けず…」
NEWSポストセブン
「グラディアトル法律事務所」の代表弁護士・若林翔氏
【改正風営法、施行へ】ホストクラブ、キャバクラなどナイトビジネス経営者に衝撃 新宿に拠点を持つ「歌舞伎町弁護士」が「風俗営業」のポイントを解説
NEWSポストセブン
中居正広氏の兄が複雑な胸の内を明かした
「本人にとって大事な時期だから…」中居正広氏の実兄が明かした“愛する弟との現在のやりとり”《フジテレビ問題で反撃》
NEWSポストセブン
長嶋茂雄・巨人軍終身名誉監督からのメッセージ(時事通信フォト)
《長嶋茂雄さんが89歳で逝去》20年に及んだ壮絶リハビリ生活、亡き妻との出会いの場で聖火ランナーを務め「最高の人生」に
NEWSポストセブン
中居正広氏の兄が複雑な胸の内を明かした
「兄として、あれが本当にあったことだとは思えない」中居正広氏の“捨て身の反撃”に実兄が抱く「想い」と、“雲隠れ状態”の中居氏を繋ぐ「家族の絆」
NEWSポストセブン
今年3月、日本支社を設立していたカニエ・ウェスト(時事通信フォト)
《カニエ・ウェストが日本支社を設立していた》妻の“ほぼ丸出し”スペイン観光に地元住人が恐怖…来日時に“ギリギリ”を攻める可能性
NEWSポストセブン
現在、闘病中の西川史子(写真は2009年)
《「ありがとう」を最後に途絶えたLINE》脳出血でリハビリ中の西川史子、クリニックの同僚が明かした当時の様子「以前のような感じでは…」前を向く静かな暮らし
NEWSポストセブン