国内

マルチ商法に8年ハマった30代男性が無断でシェアハウスを出るまで

繁華街で2人一組となり「美味しい居酒屋しりませんか」と声をかけるなどしてマルチのグループへ勧誘している(イメージ、時事通信フォト)

繁華街で2人一組となり「美味しい居酒屋しりませんか」と声をかけるなどしてマルチのグループへ勧誘している(イメージ、時事通信フォト)

 失敗を繰り返して人は成長するものだが、最近、巷で広がっているマルチ商法に若者を誘う集団の活動に関わってしまうと、やり直すことが難しいほど金銭的な問題だけでなく、仕事や人生のやり直しが難しくなっているようだ。ライターの宮添優氏が、3年の共同生活を含む約8年の活動を経て今は職業訓練をしている30代後半の男性から、どのようにして「本当に何もない自分」になってしまったのかを聞いた。

 * * *
 筆者の前に現れたのは30代後半で同い年くらい、働き盛りの男性のはずだった。若干白髪まじりのヘアスタイルはついさっき起床したかのようで、髪も爪も伸び放題。申し訳ないが見た目こそ「小汚い中年」そのものではあったが、喋り方や挙動はどこか「子供っぽさ」を感じさせる。

「脱法マルチ? と言われると、僕はもうやってないんで今もそうなのかわかりませんが、そう指摘されても反論できる人がいるのかな。ルームシェアしている若い人は、今も一生懸命にやってるんじゃないですか」

 下田雅也さん(仮名・30代後半)は、現在大手紙や民放ニュースなどで大々的に取り上げられている、とある「マルチ商法」集団に所属していた。報道等によればこの集団は、繁華街での声かけや街コンなどでターゲットを見つけてはマルチ商法に勧誘するだけでなく、メンバーを同じ共同住宅に住まわせて生活時間をコントロールするなどして一種の洗脳状態にし、組織から離れられなくさせるという。そしてこの下田さんは昨年まで、都内にある、集団メンバーが集まって暮らす共同住宅にいた。

「私は関西の方でマルチっぽいビジネスをやっていまして、数年前に東京に出てきたんです。東京には組織内で世話になっている『師匠』もいるし、そんな師匠を慕って、関西やいろんなところから何人、何百人ものメンバーが上京してきて、共同生活をしていると聞いて出てきました」(下田さん)

 この組織、複数の関係者の話によれば、具体的な組織名は持たないが「事業化集団環境」という通称を持ち、東京や大阪を拠点にマルチビジネスを展開。師匠などと呼ばれるリーダー格たちからメンバーは言葉巧みに「経営者になる目標」を課せられ、経営者になるためだという理屈で月に15万円以上の化粧品や日用品を購入することになってしまうのだという。そして、月に15万円を支払う新規メンバーを集めれば集めるほど組織内での格があがる、店を持てるし師匠になれる、もっと高みを目指せと言われてその気になり、繁華街や居酒屋、街コン会場などで、土日平日関係なく、日夜怪しい勧誘に勤しんでいるというのだ。

関連記事

トピックス

6月9日付けで「研音」所属となった俳優・宮野真守(41)。突然の発表はファンにとっても青天の霹靂だった(時事通信フォトより)
《電撃退団の舞台裏》「2029年までスケジュールが埋まっていた」声優・宮野真守が「研音」へ“スピード移籍”した背景と、研音俳優・福士蒼汰との“ただならぬ関係”
NEWSポストセブン
小室夫妻に立ちはだかる壁(時事通信フォト)
《眞子さん第一子出産》年収4000万円の小室圭さんも“カツカツ”に? NYで待ち受ける“高額子育てコスト”「保育施設の年間平均料金は約680万円」
週刊ポスト
週刊ポストの名物企画でもあった「ONK座談会」2003年開催時のスリーショット(撮影/山崎力夫)
《追悼・長嶋茂雄さん》王貞治氏・金田正一氏との「ONK座談会」を再録 金田氏と対戦したプロデビュー戦を振り返る「本当は5打席5三振なんです」
週刊ポスト
打撃が絶好調すぎる大谷翔平(時事通信フォト)
大谷翔平“打撃が絶好調すぎ”で浮上する「二刀流どうするか問題」 投手復活による打撃への影響に懸念“二刀流&ホームラン王”達成には7月半ばまでの活躍が重要
週刊ポスト
懸命のリハビリを続けていた長嶋茂雄さん(撮影/太田真三)
長嶋茂雄さんが病に倒れるたびに関係が変わった「長嶋家」の長き闘い 喪主を務めた次女・三奈さんは献身的な看護を続けてきた
週刊ポスト
6月9日、ご成婚記念日を迎えた天皇陛下と雅子さま(JMPA)
【6月9日はご成婚記念日】天皇陛下と雅子さま「32年の変わらぬ愛」公務でもプライベートでも“隣同士”、おふたりの軌跡を振り返る
女性セブン
(インスタグラムより)
「6時間で583人の男性と関係を持つ」企画…直後に入院した海外の20代女性インフルエンサー、莫大な収入と引き換えに不調を抱えながらも新たなチャレンジに意欲
NEWSポストセブン
中国・エリート医師の乱倫行為は世界中のメディアが驚愕した(HPより、右の写真は現在削除済み)
《“度を超えた不倫”で中国共産党除名》同棲、妊娠、中絶…超エリート医師の妻が暴露した乱倫行為「感情がコントロールできず、麻酔をかけた患者を40分放置」
NEWSポストセブン
清原和博氏は長嶋さんの逝去の翌日、都内のビル街にいた
《長嶋茂雄さん逝去》短パン・サンダル姿、ふくらはぎには…清原和博が翌日に見せた「寂しさを湛えた表情」 “肉体改造”などの批判を庇ったミスターからの「激励の言葉」
NEWSポストセブン
貴乃花は“令和の新横綱”大の里をどう見ているのか(撮影/五十嵐美弥)
「まだまだ伸びしろがある」…平成の大横綱・貴乃花が“令和の新横綱”大の里を語る 「簡単に引いてしまう欠点」への見解、綱を張ることの“怖さ”とどう向き合うか
週刊ポスト
インタビュー中にアクシデントが発生した大谷翔平(写真/Getty Images)
《大谷翔平の上半身裸動画騒動》ロッカールームでのインタビューに映り込みリポーター大慌て 徹底して「服を脱がない」ブランディングへの強いこだわり 
女性セブン
映画『八日目の蝉』(2011)にて、新人俳優賞を受賞した渡邉このみさん
《ランドセルに画びょうが…》天才子役と呼ばれた渡邊このみ(18)が苦悩した“現実”と“非現実”の境界線 「サンタさんを信じている年齢なのに」
NEWSポストセブン