前代未聞の完全投球で無限の可能性を感じさせるロッテ・佐々木朗希(20)。プロ3年目ながら、唯一の400勝投手である“カネやん”こと故・金田正一氏の記録を超えることさえ期待してしまうが、球界OBたちは佐々木の投球を見て何を思うのか。
驚異的なスタミナから「人間機関車」「ガソリンタンク」と呼ばれ、金田氏に次ぐ歴代2位の通算350勝をあげた米田哲也氏も、佐々木の快投を「凄いと思うよ。やっぱり三振が取れるからね」と高く評価する。
「とにかく球が速いことに尽きる。だからフォークやカーブも生きてくる。これは持って生まれたもの。試合途中からボールが高く浮き始めることもあるが、四球を出さない。これは凄いことで、佐々木はいつでもストライクが投げられて、自分で投球を組み立てられる数少ないピッチャーと言える。これこそがプロですよ」
ただ、高卒2年目から18年連続2ケタ勝利、先発626試合(歴代1位)といった大記録を持つ米田氏の目には、物足りない部分もあるという。
「高卒1年目ならまだしも、3年目の選手が100球で制限していたらアカン。練習で投げ込み、いつでも完投できることを見せつけないと。ピッチャーを過保護に育てても長持ちする保証はないからね。むしろ過保護で長続きした投手は見たことがない。
すぐに時代が違うと言われるが、投げ込んできた投手が長く現役を続け、成績を残したのは事実でしょう。しっかりケアする必要はあるが、投げる筋肉は投げてつくるのが鉄則です。こんな過保護ではメジャーに行って勝ち星を重ねようにも、中4日で投げられないと思う」
佐々木の能力があれば、もっと投げられると米田氏は期待を込めて言う。
「左足をあれだけ高く上げてもブレないのは大したもの。あの下半身があれば、完投できますよ。どんどん投げさせればもっともっと成長すると思います。どんな一流ピッチャーでも壁にぶつかる。それを自分の力で乗り越えるから先に進める。
もし100球を超えて疲れが出たなら、中6日を中8日などに延ばせばいい。それをしないのは営業面の問題でしょう。そんなことで球数制限をされる佐々木も気の毒だ。2試合連続の完全試合という大記録へのプレッシャーは佐々木にとって大きな財産になったはず。8回での降板をベンチの勇気と美談にしていいのか。
佐々木が今のピッチングを何年続けられるかです。プロはいかに持続させるかが勝負で、自ら挑戦してどう限界を超えていくか。それができれば、とてつもないピッチャーになるだろうね」
【プロフィール】
米田哲也(よねだ・てつや)/1938年生まれ。1956年に阪急に入団。通算3388奪三振、通算投球回数5130は金田氏に次ぐ歴代2位の記録。通算350勝。
※週刊ポスト2022年5月6・13日号