「維新と政権交代を目指すなら、連合として参院選は支援できない」──4月22日午前、衆院議員会館の玉木雄一郎事務所を訪ねた連合傘下の産業別労働組合(産別)の自治労幹部は、国民民主党の玉木代表にこう詰め寄った。参院選での日本維新の会との相互推薦について、党内で混乱を極める国民民主党。その裏には、党運営を巡る玉木氏と代表代行の前原誠司氏との路線対立があった。
4月20日、今夏の参院選に向けて国民民主党が、日本維新の会と交わした京都、静岡両選挙区で相互推薦を決めた合意文書には「両党は、『新しい国のかたちの創造的改革の推進に関する基本法案』を国会に共同で提出し(省略)政権交代を実現して日本再生のために尽力する」との文言が盛り込まれていた。「非自民、非共産の政権交代を目指す」とした日本維新の会との連立構想に、国民民主党が深く踏み込む内容である。
「大阪都構想」などを巡って維新と敵対してきた自治労が、連立構想に反発するのは当然の成り行きだった。最大支援組織の連合にソッポを向かれれば、玉木氏の求心力低下は避けられない。
しかし、より深刻な問題は、前原氏がこの合意文書を玉木氏の頭越しに独断で日本維新の会と交わしたことだ。政策実現を最優先して将来的な岸田自民党との連立も排除していない玉木氏への対抗意識も見て取れる。
玉木氏は先の国民民主党の臨時執行役員会で前原氏と榛葉賀津也・幹事長に対して、日本維新の会との再協議を指示した。しかし、再協議について日本維新の会の馬場伸幸・共同代表は、筆者の取材にこう答えた。
「合意文書は前原さんが用意したものですから、再協議と言われても、ある程度、党の基本理念や方向性が一致しなければ(ならない)。選挙目当ての野合は受け入れられません」
前原氏は党内向けの解説文書を作成して混乱を収める見込みだが、有権者には2017年の「希望の党」合流騒動から続く、立憲民主・国民民主党の路線対立が激化しているように見えたに違いない。
「本来なら前原、榛葉両氏には党規違反が問われかねないだけに、厳しい処分を求めても良さそうですが、かと言って離党されても困る」(玉木氏周辺)
党内で腫れ物扱いとなりつつある前原氏は、民進党を崩壊に導いた最後の代表としての責任がある。
参院選の結果次第では前原氏が、再度の分裂劇を引き起こす事にもなりかねないだろう。
◆ジャーナリスト・藤本順一の政治コラム「永田町ワイドショー」