千葉県市川市の動物病院から大型犬「ピットブル」が逃走、周辺住民を不安に陥れたのは、4月6日のことだった。ピットブルは翌朝、警察官が保護。けが人はいなかったが、日本でも大型犬による事故は珍しくない。千葉県では4月22日にも、民家から逃げたドーベルマン4頭が路上で保護される事件があった。専門家からは、一部の飼い主に危機意識が欠如していることを懸念する声もあがっている。
4月上旬、動物病院から逃げ出したのは、体長約130cm、体重40kgを超える雄のピットブル。飼い主が予防接種のため病院に連れてきたところ、首輪が外れて逃げ出したという。獣医師の石井万寿美氏が語る。
「確保にあたった警察官が『おすわり』と言うと大人しく従ったそうですが、ピットブルはもともと米国で闘犬用に改良された犬種です。人間や他の犬への攻撃性があるので、飼い主や動物病院には厳重な管理が求められます」
環境省調査によると、令和2年度の犬の咬傷事件は全国で4602件に上った。
2020年5月には、千葉県の民家から逃げ出した雄のピットブルが近所の住宅敷地内に侵入。住人の60代女性と抱いていた飼い犬の小型犬に噛みついた。女性は腕などに全治約40日の重傷を負い、小型犬は死亡した。
2015年にはやはり千葉県の住宅街の路上で、体長120cmを超える雄の紀州犬が逃走。通行人を次々と襲う事故が起きた。駆け付けた警察署員が飼い主の了解を得て射殺した。
いずれも飼い主の不注意が招いた事故といえる。前出・石井氏が指摘する。
「大型犬は力が強く飼育は大変なので、きちんと勉強し、安全管理を行なっている方が大半だと思います。ただ、大型で攻撃的な性格の強い犬への理解が足りない飼い主さんもいます。逃走防止の工夫や、散歩時に必ず首輪とハーネスの両方をつけるなど、事故防止の対策をしましょう。また、犬も老いると認知症を発症することがあり、しつけたことを忘れたり、怒りっぽくなることがあります。『突然鳴きだす』『くるくる回る』など認知症の症状が疑われる場合はさらに注意が必要です」
茨城県は条例で、ピットブルなど人に危害を加える恐れのある8犬種を『特定犬』に指定。檻の中での飼育の義務化など、管理の厳格化を求めているが、多くの場合は飼い主のマナーやモラル任せになっているのが現状だ。