「居心地のよさは格別だよ」(50代、運輸業)と、6坪の親密な空間で地元客が寛ぐ『十一屋酒店』。
西武池袋線・中村橋駅北口から徒歩2分、飲食店がひしめく昔ながらの商店街の横道、“角打ち処”と銘打った白い小さな提灯が目印だ。
店の奥にある角打ち台の後ろは人ひとり通るのがやっと。
「とてもバリアフリーとはいえないけどね(笑い)、こぢんまりしていてこの距離間がかえって落ち着くんです」(同前)
3代目店主の江村健二さん(63才)が酒屋の倉庫を改修して角打ちを始めたのが4年前。「面倒見がよくて、懐の深い人」(50代)という店主を“大将”と慕って地元客が連日集う。
「大将はそこの『サンツ商店街』の理事長を長年務める品格のある紳士。もう、かれこれ30年の付き合いになる。俺は宴会部長だけどね(笑い)。酔っぱらってきたお客さんには、『はい、あなたそれ以上は赤信号よ』なんて洒落た言い方をするの。ときに厳しいことも言うんだけど、愛情と優しさがあるんだよ」(60代、元飲食業)
「みんな十一屋ファミリー。いつも気心知れた人たちがいて、家族みたいに感じています」(50代、IT企業)
「女性ひとりでゆっくり飲める、私の大切な居場所。大将の人柄がいいし、お客さんもみんないい人たち。初めて来たお客さんにも気さくに話しかけるから、ひとりで来ても仲間の輪に入りやすいんですよ。ここで出会った仲間たちと、河原で芋煮会やお花見もしましたね」(60代)。
「皆で高尾山にも登ったし、大将の故郷の信州にそばを食べにも行ったよね。この店に来たきっかけは、商店街を歩いていたとき、大将から『角打ち始めるから来てね』って声かけてもらったこと。それ以来ずっと来てるから、ここまでの道のりは体が覚えているよ」(50代)
商店街に灯りがともり、次々に「ただいま」と訪れる客らは、皆、我が家気分で寛いでいる。
「お客さん同士が家族みたいな雰囲気で交流しています。店に地域のコミュニティーができているのが嬉しいですよね」と店主。