北朝鮮政府が外貨獲得のために中国やロシアに派遣した北朝鮮労働者が最近、突然姿を消すというケースが増えているが、金正恩朝鮮労働党総書記が「敵対勢力の策動だ。死体でもよいから連れ戻せ」と指示していたことが明らかになった。
これを受けて、駐中国・ロシアの北朝鮮大使館や領事館は、現地の北朝鮮労働者や監督官らも含めて、パスポートや身分証明書など身元を証明する書類を提出させ、保管しているという。米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」が報じた。
ことの発端は、今年2月、中国上海市の繊維工場に派遣されていた北朝鮮労働者20人と監督官らが行方不明になったことだ。北朝鮮当局は中国政府に調査協力を要請しているが、いまだに彼らの行方は分かっていないという。
これに先立ち、ロシア極東部のウラジオストクでも昨年、多くの北朝鮮労働者が姿をくらませるというケースが多発している。
このため、中露両国の労働現場では、秘密警察である国家保衛省要員が労働者らを常時監視状態に置き、個人行動を禁止するなど管理体制を強化しているという。
中国東北部在住の朝鮮族の中国人はRFAに「上海の事件の後、中国にある北朝鮮大使館と領事館は、現地の企業幹部と代表者のパスポートと身分証をすべて回収した」と語っている。
この中国人は中露両国に派遣されている北朝鮮労働者が姿を消していることについて、「新型コロナウイルスの感染拡大で、中国企業が操業を停止するなど、会社経営が悪化し、北朝鮮労働者への支払いも滞っている。それにもかかわらず、北朝鮮本国は労働者に割り当てたノルマを支払うように無理強いしているため、身の危険を感じた労働者が逃げだしたというのが本当の理由ではないか」と指摘している。
RFAは中露両国の複数の情報筋の話として、「中国東北3省の北朝鮮労働者の数は今年1月時点で8万~10万人と推定され、その大部分は北朝鮮と国境を接する遼寧省丹東市に滞在している。ロシアの場合はウラジオストク周辺に約2万人の北朝鮮労働者が派遣されている」と報じている。