日常生活で、「論破」という言葉を耳にすることが珍しくなくなった。もともと、インターネット掲示板「2ちゃんねる(現5ちゃんねる)」を中心に多用されていたワードだったが、2015年には『痛快TV スカッとジャパン』(フジテレビ系)の番組内で誕生したキャラクター・イヤミ課長が言い放つ「はい、論破!」という決めぜりふが人気となり、同年の「ユーキャン新語・流行語大賞」にもノミネートされた。
しかし「論破好き」な人たちがトラブルになることもしばしば。都内の小学校に勤務する教員は、頭を抱えて話す。
「PTA会長のBさんは、役員会での発言者をとことん追いつめます。先日も、PTA行事の側溝清掃を『業者に委託しては?』と意見した人に対し、『費用について見積もりは取りましたか?』『費用を各家庭で分担することになりますが、世帯ごとなのか、児童数なのか、どのように割り振るお考えですか?』とダメ出し。最終的に『そういうことなので』と却下。
正論かもしれませんが、話し合うというより、相手を黙らせるBさんの口ぶりに、役員のやる気が損なわれるばかり。出席率が下がる一方で困っています」
論破好きな夫に悩む主婦もいる。
「子供が小学生になって余裕ができたので、『家計の足しにパートへ出たい』と夫に相談したんです。
しかし、『家事をする時間が減って、食事が出来あいのものやデリバリーになり、食費がかさむのが目に見えている』『パート中に雨が降ったら、洗濯物はどうするの? 洗い直すか、コインランドリーへ行くでしょ?』『身ぎれいにしなきゃいけないから、化粧品やら洋服やらを買い足すことにならない?』と理屈を並べ、『よって、きみのパートは家計の足しにはならない。むしろコスパが悪い』と言われました。
こうした夫の反論癖は日常茶飯事で、最近は子供も夫のマネをして、『ママの言うことは間違っている』と言うようになりました」