老親や家族に「がんをどう伝えるか」はがん患者の誰もが悩むところ。いざ、家族に伝える際にはどうするのが“理想”なのか──。
2004年、45歳で末期の腎臓がんと診断された俳優の小西博之(62)は、入院が決まった段階で実家の両親に「初期のがんだから心配ない」と“嘘”をついた。
「告知の場には事務所の会長・社長がいて、彼らが親への連絡や面会者への連絡まですべてやってくれました。子供には心配をかけたくなかったので一切知らせませんでした。
両親にも心配をかけないように、入院と手術の日程だけを伝えて『初期(ステージ1)のがんを取るんだ』という説明をしたんです。大したことはないから『(和歌山の)実家にいて、神様にうまくいくようお祈りしていてね』と言ったのですが、やはり病院に来ました。げっそりと体重の落ちた僕を見たら言葉が出なかったようです。恐らく僕が嘘をついているのはバレていたと思います」(小西)
結果的にはリンパ節への転移はなく、小西は末期の腎臓がんから生還を果たしたが、両親は手術後、転移についての検査結果が出る前日に故郷へと帰ってしまったという。
「なんで帰るのか不思議でした。後から聞いたら、母が『絶望的な状況で、先生に告知されて落ち込む息子を見ていられない。だから実家に帰って神様にお祈りする』ということだったんです。実家の山の上に神社があるんですが、そこに登って一日拝んだらしい。母は神道を信仰していたので、とにかくお祈りしてくれました」(小西)
このように「親には心配をかけたくない」と思う人が多いが、医師の尾崎章彦氏(ときわ会常磐病院乳腺外科)は、「高齢の親御さんも一緒に病院に来て説明を受けてもらってもいい」と語る。
「50代くらいの働き盛りの患者さんほど、一人で抱えて頑張ってしまいがちですが、がんは周囲のサポートが本当に大事な病気です。気力も体力ある若い子供が患者さんを支えてくれるのが理想ですが、老親であっても、病状を知りたいとか一緒に頑張りたいとの気持ちがあれば、重要な病状説明の時はご一緒してほしい。
患者さん本人だけでは気付けないこともあるので、周りのご家族が疑問に思うことなどを積極的に質問していただければ、患者さん自身の力になるはずです」
※週刊ポスト2022年5月6・13日号