ロシア軍のウクライナ侵攻を受けて、中国の軍事作戦への警戒感を高めている台湾が、中国と台湾が領有権を主張する南シナ海の南砂諸島のなかで、台湾軍が駐留している軍事施設を大幅に改良し、中国軍に対抗しようとする動きを強めていることが分かった。これに対して、中台双方と同様に、南シナ海の島嶼の領有権を主張しているベトナムやフィリピンから「中国を刺激する動きだ」などと批判する声が出ている。台湾紙「聯合報」などが報じた。
南沙諸島はもともとの陸地面積は0.5平方キロ程度しかない岩礁の集まりだが、諸島を領有すれば広大な排他的経済水域 (EEZ) や大陸棚の漁業資源や石油・天然ガス資源を獲得できるだけでなく、安全保障上の要地となる。中国や台湾のほか、ベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイが海岸地形全部または一部の主権を主張している。このため、各国はいくつかの島を軍事基地化し領有権を誇示している。
とくに、中国は岩礁程度の島の周辺を埋め立てて、数百人の部隊を駐留させ、軍艦や戦闘機などを配備し軍事要塞化している。これについて各国は激しい批判を向けているが、中国の軍事的な動きは続いている。
台湾軍も南沙諸島の北部に位置する太平島に滑走路を建設したほか、蔡英文政権は海岸巡防署の艦船による海難救助や医療チームの負傷者治療の訓練を実施し、その模様を内外メディアに公開するなど領有権をアピールしている。また、すでに戦闘機が発着できる滑走路も整備している。
太平島は台湾から1500km、フィリピンから853kmの距離にあり、台湾の高雄市の管理下にある。
聯合報がこのほど報じた今回の台湾軍の計画によると、年内に既存の1150mの滑走路を350m延長するとともに、軍が駐留する基地を拡張する。1500mの滑走路には、F16戦闘機やP-3C対潜水艦が発着できるようになり、これまでと比べて戦闘力が格段に向上するという。
これについて、フィリピンなどから「このような計画が実施されれば、各国の協議の障害になるばかりでなく、中国をいたずらに刺激するだけだ」などとの批判が出ている。
台湾空軍の陳国華報道官は報道に関して「ノーコメント」としているが、台湾メディアは「ロシア軍のウクライナ侵攻によって、中国軍の台湾への軍事作戦も警戒しなければならず、蔡英文政権も中国への対応について本腰を入れて検討している動きととらえることができる」などと報じている。