幼い頃に戦中、戦後を過ごした人に、思い起こされる「人生最初のごちそう」。 日本が決して豊かではなかった時代、“最初の晩餐”は何であったのか。当時のエピソードと ともに、思い出の料理を完全再現。“おいしい”の記憶と共によみがえる物語とは──。グッチ裕三さん(70才)に聞いた。
食を追求する出発点になった魔性の旨み
子供の頃から、とにかくベーコンが大好物だったというグッチ裕三さん。朝、「今日はベーコンがあるわよ」と母親に起こされれば、飛び起きて食卓に向かった。当時のごちそうはもちろん、燻製の香りが食欲をそそるベーコンのソテー。
「やっぱり忘れられないお袋の味だね。ベーコンは燻製の香りが最高。食べたときに“おいしい”のスイッチを押してくれる、魔性の食べものですよ」(グッチ裕三さん)
ベーコンソテーとじゃがいもの炒めものは、グッチ裕三さんの大好物かつ母の定番料理。
「精肉店で買ってきた5mmくらいの厚さの、長〜いベーコンをそのまま焼くの。最近の市販品と違って、昔のベーコンは燻製の風味が強かった。あの燻された香りは、旨みの原点だね。
付け合わせは決まってじゃがいもの炒めもの。この炒めものは、中学3年間のお弁当にも欠かさず入っていた、母の超定番料理。じゃがいも、にんじん、ピーマンをせん切りにして炒め、塩こしょうで味つけした、シンプルな炒めものです。そして、パセリがちょんと添えてある。彩りもいいでしょ?」(グッチ裕三さん)
母親が仕事で忙しかったためよく祖母の家で食事をしていたというグッチ裕三さんは、小学校の低学年から「地味なばあちゃんの料理にプラス一品!」と料理を始めたそう。ベーコンの旨みを原点に、グッチ裕三さんの食への追求は、この頃から始まっていたに違いない。
【プロフィール】
グッチ裕三(ぐっち・ゆうぞう)/1952年東京都生まれ。1978年にビジーフォーを結成し一躍人気に。料理上手としても知られ、『THE 料理王』(日本テレビ系)では芸能人の初代料理王となり二連覇を記録。弊誌の料理連載は大好評で17年間続いた。YouTubeにて『グッチ裕三のバイアスかかってます』を配信中。
※女性セブン2022年5月12・19日号