人間の体には、1000種類以上の菌が存在しているという。それらの菌は一般的に、ビフィズス菌などの人体に有益な働きをする「善玉菌」、健康を害するO-157などの「悪玉菌」、そしてその時々によっていい働きも悪い働きもする「日和見菌」に分類できる。
善玉、悪玉、日和見に限らず、より多くの種類の菌がバランスよく、数多く存在するように、体の環境を整えることを「菌活」という。常在菌の状態がよくなれば、便秘解消やダイエット効果だけでなく、睡眠の改善、免疫力アップ、美肌・美髪効果、アンチエイジング……と、全身にさまざまなメリットが期待できるという。
恵比寿形成外科・美容クリニックの西嶌暁生さんが、肌の常在菌について解説する。
「肌の善玉菌の代表は“美肌菌”ともいわれる『表皮ブドウ球菌』。透明感のある健康的な肌に多いとされ、肌表面のバリア機能を補ったり、肌を細菌の侵入から守るほか、皮脂や汗を分解して天然保湿成分の脂肪酸やグリセリンにすることで、肌の乾燥を防ぐ働きもあります」
一方、悪玉菌の代表は、皮膚の炎症や感染を引き起こす黄色ブドウ球菌。ニキビの原因になることで知られるアクネ菌は、実は日和見菌の一種だ。肌の菌トレは、美肌菌を増やすように働きかけることが大切。西嶌さんは、美肌菌の大敵の1つは間違った洗顔だと話す。
「皮膚の常在菌は、洗顔によって洗い流されます。洗顔してから常在菌や美肌菌が元の数に戻るまで、約12時間必要になる。そのため、洗顔は1日1〜2回まで。合成界面活性剤が使われているクレンジング剤や洗顔料は、美肌菌を洗い流すだけでなく、すすいだ後の残留物を常在菌が分解できず、本来の肌のバリア機能を破壊します」(西嶌さん)
洗顔には、美肌菌のえさになる石けん素地のみでつくられた純石けんを使うべきだ。また、熱すぎるお湯も皮脂や常在菌を過剰に洗い流して肌を傷つけるため、すすぎの温度は34〜35℃以下のぬるま湯にし、朝はお湯だけの洗顔にするなど、顔を洗いすぎないようにするのがいい。
メイクはできるだけ石けんで落とせるものを選び、どうしてもクレンジングが必要な場合は、合成界面活性剤の少ないものを使い、メイク落とし後のダブル洗顔も避けたい。菌ケア専門家でKINS代表の下川穣さんは言う。
「そもそも、基礎化粧品の数は少ない方が菌にいい。顔は洗顔料で洗わなくてもいいのです。3000年前の日本に洗顔料はありませんでしたが、当時の日本人の肌が汚かったわけではありません。皮膚は何もしなくても、菌の自浄作用できれいになるものなのです」(下川さん・以下同)