かつて子役と大人の役者の間には、高い壁が存在した。「一度染み付いた“子ども”というイメージから脱却するのは難しい」と長年言われており、たしかに子役としてブレイクしたものの、気づけばメディアから姿を消していたタレントは少なくない。
しかし、今の芸能界はどうだろうか。成長後も『るろうに剣心』や『君の名は。』など多数のヒット作に関わる神木隆之介(28)を筆頭に、2021年ブレイク女優ランキング第1位に輝いた伊藤沙莉(28)、2022年度後期放送のNHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』のヒロインに起用された福原遥(23)と、子役出身者が大活躍している。また、志田未来(28)は、3月26日に開局したBS松竹東急のドラマ『いぶり暮らし』で主演を務めている。
映画『万引き家族』(2018年)などで数々の女優賞を獲得してきた松岡茉優(27)も、芸能界入りしたのは8歳のときだ。ほかにも濱田岳(33)、須賀健太(27)、岡田結実(22)、吉川愛(22、旧芸名は吉田里琴)と子役出身の人気俳優は枚挙にいとまがない。17歳の芦田愛菜も6月に主演映画『メタモルフォーゼの縁側』の公開が控えており、大人の役者として活躍するためのステップを順調に上っている。
オンラインレッスンも含めて全国に生徒を抱え、子役の指導も手がけるACT芸能進学校の運営スタッフが、「子役出身が成功するのは難しい」と言われてきた理由を説明する。
「子役に対して、子どもらしさを強調するような話し方の芝居を求めるディレクターが業界には大勢います。そのため大手の児童劇団でもそのような“子ども芝居”の練習が行われて、子どもたちも『こういうお芝居がお仕事に繋がるんだ』と学習します。しかし、もちろん成長していくと、子ども芝居を続けたところで良い結果にはなりません。
そして、成長して容姿が変化したり声変わりすると、世間の人々も『雰囲気が変わった』と違和感を覚えるようになってしまう。事務所の方々が子役をマネジメントする場合、大人になったときのことまで予測しながら仕事を受ける必要があります。それが子役という存在の難しさであり、活躍し続ける子役が少なかった理由なのだと思います」(ACT芸能進学校の運営スタッフ、以下同)