肩こりや腰痛は「国民病」と呼ばれるが、同様に多くの人を悩ませるのが「股関節」の痛みだ。厄介なことに股関節の痛みは放っておくと、知らないうちに全身を蝕むリスクもある。
「男性の場合、初期症状は脚の付け根部分(鼠径部)の違和感程度で、『病気と思わなかった』という患者さんが多い。ですが、悪化すれば日常的な歩行にも影響するなど非常に怖い病気です」
そう語るのは、川崎医科大学附属病院整形外科教授で股関節外科が専門の三谷茂医師だ。脚の付け根にある左右の股関節は人体で最も大きな関節で、骨盤と大腿骨を繋ぐ“要”だ。周囲には大腿四頭筋や内転筋などがあり、「立つ」「歩く」「座る」など下肢を大きく動かす際に重要な役割を果たしている。その股関節の軟骨がだんだんすり減って変形したり、骨同士がこすれて炎症を起こしたりする病気が「変形性股関節症」だ。三谷医師が言う。
「レントゲンで所見が見つかる予備群の有病率は50歳以上の男性で18.2%。実際に痛みなどの症状を有する変形性股関節症の患者数は男女合わせて推定500万人程度と考えられます」
発症すると、どんな症状が見られるのか。
「変形性股関節症の『初期』では、股関節を曲げたり内側に捻ったりする動作で痛みが生じるようになります。さらに軟骨がすり減ってくると、太腿や膝が重く感じ、動き始めに脚の付け根が痛むようになる。靴下が履きにくい、段差を越えるのが辛いといった症状が現われます。軟骨が2ミリ以下にすり減る『進行期』になると、歩くだけで痛みが生じます」(三谷医師)