北朝鮮と国境を接する中国遼寧省丹東市の衣料工場で、北朝鮮からの女性労働者800人のうち20人が新型コロナウイルスに感染していることが確認されたとして、工場が閉鎖となり、丹東市の一部地域が都市封鎖(ロックダウン)に入っていることが明らかになった。しかし、市政府と北朝鮮総領事館は市民の北朝鮮感情に留意して、この事実を隠蔽し、「単なる咽喉炎」だと発表しているという。この工場では医療従事者が着用する医療用の防護服を製造しており、24時間の勤務体制を敷くなど感染対策には極めて重要な工場だったことからも、市政府は北朝鮮労働者のコロナ感染を隠しているとみられる。米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」が報じた。
丹東市では4月中旬から感染者が増えており、この工場でも4月27日に北朝鮮労働者800人全員がPCR検査を受けた結果、20人の感染が確認されたことから、直ちに工場閉鎖の措置がとられた。
RFAの取材に対して、工場側は「単なる咽喉炎であり、新型コロナウイルスではない」などと答えているが、情報筋は「中国側は、国連の対北朝鮮制裁に違反して、北朝鮮籍の労働者を雇用しており、彼女たちが感染したことで、帰国できなくなる可能性も出るなどのさまざまな影響を懸念しているのではないか。いずれにしても丹東市政府と北朝鮮総領事館が情報を隠蔽していることは確かだ」と語っているという。
また、別の情報筋によると、丹東市では工場労働者だけでなく、北朝鮮レストランやバー、ホテルなどで働く複数の北朝鮮女性が感染しているとの情報もあり、それらの場所で飲食をした市民がレストランなどに対して抗議するといったトラブルがあった。現在、感染した北朝鮮女性は市当局によって隔離施設に入れられているという。
RFAは「丹東市でのコロナ感染者が増えるにつれて、北朝鮮労働者を抱える企業の生産量は激減している。感染状況が悪化する前に、資材を購入していた企業は北朝鮮労働者を無理やり出勤させており、彼女たちの間で感染が拡大しているという悪循環を生んでいる」と指摘している。
また、丹東市など国境地帯の都市のロックダウンが広がるにつれて、今年に入ってほぼ2年ぶりに再開されていた中朝間の鉄道による国境貿易も5月1日、再び完全に中断している。