コン、コン。ドアのノック音とともに、対話劇は幕を開ける。「寒いですねえ」。部屋に入ってくるなり、そう切り出すのは秋篠宮である。それに応じるのは元毎日新聞編集委員のジャーナリスト・江森敬治氏だ。たわいもない話題に始まり、父親の退位や長男の進学などについて会話は深まっていく。このたび江森氏が上梓する『秋篠宮』(小学館刊)には、そんなやりとりが生々しく描かれている。5月11日の同書発売に合わせて、秋篠宮の肉声を独占掲載する。【全3回の第1回】
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記者会見を除き、皇族の言葉が表に出るのは極めて異例だ。本書のベースとなった江森氏の秋篠宮邸訪問は、この5年間で37回を数えるという。
江森氏は妻が学習院大学経済学部の副手をしていた関係で、紀子妃やその父の故・川嶋辰彦氏(学習院大学名誉教授)と知り合った。その後、結婚したばかりの秋篠宮夫妻が京都を訪問した際、初めて面会した。以来、交流は約30年に及ぶ。
本書の執筆動機について江森氏は「世間で報じられる秋篠宮像と実際のそれの間にあまりにもギャップがありましたから」と説明する。例えば、長女の結婚についても多くの誤解が生じたという。
「パラリーガルのままでよいですよ」(以下、秋篠宮の発言は同書より)
これは小室眞子さんの婚約内定が報じられた直後の2017年6月に、江森氏が聞いた言葉である。
パラリーガルというのは弁護士の指示、監督のもとに法律事務にたずさわる仕事だ。年収はおよそ300万円とも言われ、眞子さんの結婚相手の職業として不安視する声まであった。だが秋篠宮は、「いまのお仕事が定職ですよ」と答えたという。
小室圭氏がニューヨーク州の弁護士試験に二度落ちたことに対し、さも新婚生活の土台が築かれていないかのように報じられる。だが、父親は当初から若き二人に過度な重圧はかけていなかった。