コン、コン。ドアのノック音とともに、対話劇は幕を開ける。「寒いですねえ」。部屋に入ってくるなり、そう切り出すのは秋篠宮である。それに応じるのは元毎日新聞編集委員のジャーナリスト・江森敬治氏だ。たわいもない話題に始まり、父親の退位や長男の進学などについて会話は深まっていく。このたび江森氏が上梓する『秋篠宮』(小学館刊)には、そんなやりとりが生々しく描かれている。5月11日の同書発売に合わせて、秋篠宮の肉声を独占掲載する。【全3回の第3回。第1回から読む】
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前天皇の退位に絡み、皇位継承や皇室のあり方について取り沙汰されることになった。きっかけを作ったのが前天皇のビデオメッセージだ。秋篠宮はどう受け止めたのか。
〈ビデオメッセージが全国に放送された際、秋篠宮邸では、秋篠宮と紀子妃、それに子供たち三人の家族全員がテレビを囲み、聞き慣れた天皇の声に耳を傾けていたという。(略)ちなみに二人の娘たちには、今回の件について父親が事前に説明していたそうだ〉
退位に対する秋篠宮の考えは至ってシンプルだ。
「ある一定の年齢を超えた時期に余生を大事にすることは、それが天皇であっても同じ人間として人間的に生きる権利という観点からも大切なことではないかと思いました」
前天皇が退位への考えを表明した後、政府の有識者会議で、「天皇は祈るだけでよい」といった趣旨の保守派の学者の発言が物議を醸した。
秋篠宮は「このように話している人たちは、天皇が『祈ることができない状況』になった場合には、どのようにするべきだと考えているのでしょうか」とも語っている。
これらの発言の背景に、江森氏は「皇室に対し、国民の理解が及んでいない」ことの苦慮を読み取る。江森氏は秋篠宮のこんな本音も聞いたという。
「どこに行くにも、必ず何人かついてきたりとか、それはやはり窮屈に思ったことはあります。そういう生活を、あなたやってごらんなさいと言われたら、十人中十人が窮屈だと思うでしょう。私も同じ人間ですから」
皇室は今も昔も厚いベールに包まれている。一方で国民の関心は極めて高い。このギャップがSNS全盛時代では、真偽不確かな情報を産み出していく。そこに苦しんだのが小室眞子さんだろう。
冒頭(第1回記事)に紹介した「パラリーガルでもよい」発言には続きがあった。
〈(秋篠宮は、結婚後の長女の新生活に対して)年収や生活面についても、柔軟に考えていた。例えば眞子内親王も働くとか、東京都心は家賃が高いので近県に賃貸マンションを探して住むといった具合に、とにかく工夫しながら「二人が身の丈にあった生活をすればよいのではないでしょうか」と率直に語っていた〉