NHK朝の連続テレビ小説『ちむどんどん』でヒロイン・暢子(黒島結菜)の母・優子役を演じ、好評を博している仲間由紀恵。5月10日放送回では、長兄・賢秀(竜星涼)が詐欺に引っかかったことから、東京行きを夢見ていた暢子の上京資金の目途が立たなくなり、積もり積もった兄への不満が爆発する展開となったが、母・優子を演じる仲間の子供たちを見守る視線はどこまでも温かかった。ベテラン芸能ライターは言う。
「暢子が無神経な兄の言動に苛立ちながら、包丁を握り料理を続ける場面では、視聴者も『何か起きてしまうのでは』とそわそわしたはずです。仲間さん演じる優子も心配している様子ではありましたが、2人の間に介入することなく、あくまで見守る立場であることを言葉ではなく目線や仕草だけで伝えていたのが印象的でした。
翌日、姉の良子(川口春奈)と暢子が取っ組み合い寸前になったときはさすがに止めていましたが、子供たちを第一に想う様子がひしひしと伝わってくる。仲間さん自身、2018年に双子を出産した2児の母親であることが、おかあ役にリアリティーを与えているのではないでしょうか」
『VERY』5月号WEB版では、実際に仲間が自らの子供たちの兄弟ゲンカについてこう語っている。
〈ケンカはさせておきます。ダメだよとは言いますけど、結局聞かないんです(笑)。ちょっと本気になりそうだな、という時は見守ります。見られている、ということをまず分からせる。だから手に持った物などで叩きそうになったら、いつも叱られているのでこちらをチラッと見てから別の方向へ投げたりしますね。手で叩いたりとか、ちょっと蹴ったりくらいまではまだ見ています。どのくらいの力だと痛いのかということも覚えないと分からないですよね。子どもたちが2人で体感しながら、相手を思いやる気持ちを覚えていけたらいいかなと〉
まさに『ちむどんどん』での兄妹ゲンカを見守る“おかあ”そのものなのだ。子育てという修羅場を経験して「包容力」を身につけたという仲間は、このインタビューで〈育児も仕事も人に助けてもらう、という社会全体の包容力がもっと広がるといいなと思います。包容力が世界を救う、みたいな〉とも語っている。優子役のイメージそのものともいえる。
「優子をめぐっては、一部で『子供たちに甘すぎる』『なぜもっと口出ししないのか』といった疑問の声も上がりますが、仲間さんの子供たちを見守るまなざしのリアリティーが、そうした声を凌駕して好評を得ています。
これまでドラマの母親像といえば、『厳しくも温かい』が定番でしたが、社会全体が厳しさを増している中、せめて母親ぐらいは子供たちにとって、ただただ温かく、すべてを受け入れる存在でもいいのではないか。その意味で仲間さんは子育て経験を経て、新しい母親像にチャレンジしているのかもしれません」(同前)