放送作家、タレント、演芸評論家で立川流の「立川藤志楼」として高座にもあがる高田文夫氏が『週刊ポスト』で連載するエッセイ「笑刊ポスト」。今回は、“歌怪獣”こと島津亜矢との初対面についてつづる。
* * *
私の個人的な見解だが、日本で歌が一番うまいと思う歌手は玉置浩二、前川清、そして沢田研二である。これが女性となるとMISIA、島津亜矢で文句のないところ。デビューからずっと聴いてきて島津亜矢には一度も会ったことがなかった。
会いたいと思えば直接会って喋ってギャラまでもらえるのがラジオパーソナリティの特権。なんたって相手は“歌怪獣”である。“お笑い怪獣”が明石家さんまなら、島津こそ“歌怪獣”と名付けたのは音楽関係にはちょっとうるさい“音ネタ”もやる演芸人であり映画ドラマには欠かせないバイプレイヤー。将来は松重豊も左ト全も左とん平も抜くだろうと業界内で言われているマキタスポーツ。私はこいつの若き日より知っていて山梨で父が「マキタスポーツ」なる運動具店をやってるのも知ってるし、家の前で写真まで撮っている。
5月2日、生放送の私のラジオに島津亜矢が来たので初めてのあいさつ代わりに「マキタのお父さん、ヅラだったんです」と伝えるとびっくりして「エッ、ヅラ―ッ キャハハハハハハハ」と笑い出したら止まらない。マキタ(父)がヅラならこっちはゲラだった。ゲラとは我々の用語で笑い上戸。「それじゃ島津さんスタジオへ」と言われても、もう笑いが止まらない。昔はやった「笑い袋」のよう。
「島津さんも、マキタからヅラ怪獣と言われて」「アッハハハハ」「たしか、1991年ですか? 『愛染かつらをもう一度』が30万枚をこえる大ヒットで」「ギャハハハハ愛染かつらってアハハなんで私かつらの歌を!?」出演の45分間、ただただ笑っている名人。
古来、演歌というと着物に髪アップという形だったのを島津はある日突然舞台を前に髪をバッサリ。独特なあのショートカットに目にも鮮やかな髪の色。それもこれもすべてアドバイスしたのは当時のIKKOだった。さすがセンス抜群。