「21世紀はこれから大地揺乱の世紀に入ります。日本列島で地震も火山活動も増えていくでしょう」
そう語るのは、東海大学海洋研究所客員教授で静岡県立大学グローバル地域センター客員教授の長尾年恭氏だ。長尾氏は気象庁が公表する地震の震源データ(一元化カタログ)をもとに、独自開発したアルゴリズム(RTM法)で地震活動を解析し、地殻変動の異常を「地下天気図」として知らせている。
「地震学界では、発生する日時、場所、規模を高精度で予測する“地震予知”は現在の技術ではできないと結論づけています。しかし、地下でどんな異常が起きているかを把握することはできる。地下の異常現象を、天気図の『低気圧』『高気圧』になぞらえて視覚的に表現したのが地下天気図です」
地図上に青色で示したのは地震活動が「静穏化」した地域、赤色は地震活動が「活発化」したエリアだ。
「地震学では、特に“嵐の前の静けさ”である『静穏化』の異常を注視します。一般的に、静穏化の異常が解消された後に地震が発生するケースが多いと考えられています。2016年4月に発生した熊本地震は、その半年ほど前に静穏化のピークを観測し、1995年の阪神・淡路大震災も静穏化の異常が見られなくなってから発生しています。また、2018年6月にM6.1を観測した大阪府北部地震のように、静穏化の真っ最中に地震が発生することもあります」
静穏化を示す4エリアのうち、長尾氏がとりわけ注意を促すのは九州地方南部だ。このエリアでは今年1月22日、宮崎・日向灘を震源とするM6.6、震度5強の地震が発生した。
「ここは南海トラフ地震の想定震源域に含まれ、M6.8以上を観測すれば、気象庁が『南海トラフ地震臨時情報(調査中)』という形で情報発表することになっています。マグニチュードは0.2違えばエネルギー量は約2倍違うのですが、想定震源域内で規模の大きな地震が起きたので専門家に緊張が走りました」