今年の秋に発表されるノーベル平和賞候補に、現在投獄されている香港のリンゴ日報創設者の黎智英氏や雨傘革命の黄之鋒氏ら民主化運動指導者ら5人がノミネートされていることが明らかになった。米国や中国など世界10カ国の著名な学者15人が共同で5人を推薦したもので、推薦理由として「この5人は、香港の市民社会を粉砕し、香港や北京の当局への批判を封じようとする香港国家安全維持法に反対した何百、何千もの香港人を代表する人々であり、彼ら5人は同法が香港にもたらした人権の圧殺と人間の尊厳に対する侮辱を受け入れるのではなく、『良心の囚人』になることを選んだのである」と説明している。米紙「ワシントンポスト」が報じた。
推薦人は、代表である中国研究者でカリフォルニア大学リバーサイド校のペリー・リンク教授や中国の反体制思想家で習近平中国国家主席を「マフィアのボス」などと呼んで、米国に亡命し中国共産党籍を剥奪された蔡霞・元中央党校教授ら。
推薦書に添えられた書簡の中で、教授らは香港の活動家たちを、ヒトラー批判のカール・フォン・オシエツキー氏(1935年受賞)、ソ連の反体制学者アンドレイ・サハロフ氏(1975年)、ポーランドの政治家レフ・ワレサ氏(1983年)、中国で拘束中に死亡した民主化指導者劉暁波氏(2010年)といった、これまでにノーベル平和賞を受賞した著名な反体制活動家や迫害された自由の闘士になぞらえて、「2022年に香港の良心の囚人に平和賞を授与することは、人類の最高の道徳的願望を強調することになる」と述べている。
黎氏ら5人に対する推薦状は今年1月31日にノーベル平和賞委員会に送られたが、これまで公表されていなかった。
5人のうち、学生指導者、黄之鋒氏(25歳)は「不法集会」の罪ですでに香港の刑務所内で1年1か月間、刑に服していたが、2021年1月に再逮捕され、新たな香港国家安全維持法によって「破壊工作」の罪に問われ終身刑となる可能性があるという。何桂藍氏は31歳の女性ジャーナリストで、2019年の民主化デモの際に政府の影響下にある組織がデモ参加者を殴打する状況を取材し報道。彼女も「破壊工作」の罪に問われ終身刑を言い渡される可能性があると伝えられる。
2021年には米国の超党派の議員グループが香港の民主化運動全体を推薦した。今年は、個人251人、団体92人の計343人がノミネートされている。