日本で初めて次世代型フォトンカウンティングCTが製造販売認証された。従来のCTに比べ画像が高精細になり、被ばく量も大幅に低下、さらに従来型では難しかった血管や骨の識別が格段に向上し、心臓や肺、腫瘍のフォローアップ検査など幅広い分野で性能を発揮しそうだ。来月、東海大学医学部付属病院に第1号機が導入され、臨床現場での活用が始まる。
日本国内のCT導入台数は1万3000台強と、アメリカを抜いて世界第1位だ。
現在のCTは体を透過したX線を検出器に当てて光に変え、それを電気信号に変換して画像化する。ただ、この方法ではX線個々のエネルギーの情報は失われ、エネルギーの総和の情報しか得られない。
他にも検出部に光をさえぎる隔壁の設置が必要で、構造上空間分解度(細かい画像が見える)にも限界があり、しかもノイズや感度の問題から被ばく量を減らしにくい。
そんな状況の中、次世代CTのフォトンカウンティングCT『NAEOTOM Alpha』(シーメンスヘルスケア)が製造販売認証された。これはX線フォトン(光子)を個別にカウントできる検出器を搭載したものだ。
東海大学医学部付属病院画像診断科の橋本順教授に話を聞いた。
「フォトンカウンティングCTの特徴は、より高精細の画像が得られ、検査時の被ばく量が従来機器に比べて大幅に減少できることです。またX線フォトン個々のエネルギーを計測することで、画像中の特定の物質を選択的に強調、または除去できます。つまり、必要な画像だけを選択的に診ることが可能になりました」
例えば、心臓の冠動脈をCTで検査する場合、困るのが血管の石灰化だ。血管の壁にカルシウムの化合物が沈着したもので、石灰化が起こると従来のCT画像では血管壁のカルシウムと血管内の造影剤の見分けがつきづらく、血管がどの程度狭窄しているのか判断が難しかったのだ。
その点、フォトンカウンティングCTはエネルギー情報によって体内の物質の識別が可能だ。仮に一つのエネルギーでは石灰化と造影剤が同じ値だったとしても、他のエネルギーの画像では異なる。その差異を利用して石灰化を表示しないように設定すると、その石灰化した部分が画像から取り除かれる。