日本で対コロナ感染対策が広く実施されるようになって3年目を迎えるいま、もうすぐコロナ禍で3回目の夏がやってくる。気象庁によれば2022年の夏も猛暑が予想されており、マスク着用をどうするかは、健康問題に直結する重大懸案といえるだろう。俳人で著作家の日野百草氏が、義務ではないはずのマスク着用の現実についてレポートする。
* * *
「子供は不満みたいですが、マスクにうるさい親もいますからね、私としてはこんな土手でサッカーしている分にはいいと思うのですが」
関東近郊、河川敷を利用して簡易に作られたサッカー場、ゴールポストすらないが、パイロンをゴールにみたてて模擬ゲームのような感じで子供たちがボールの奪い合いをしている。本格的なサッカークラブではなく、あくまで地元の子供たちが男女問わずサッカーを楽しむ集まりだと話すが、保護者はもちろん、サッカー中の少年少女たちもマスク姿だ。
「(マスクを)していたほうが角も立ちませんから、(マスクを)しろという方に合わせてます」
母親は小声で話す。土手の下で大掛かりなシートを敷いて、クーラーボックスやらを用意しながら子供たちを見ている親御さんたちと、土手の上から子供たちを見ている親御さんたちには親同士のちょっとした距離感があるように思える。もちろん、全員マスク着用なので、マスクが問題というわけではないだろうが。
「だからマスクは絶対ですね」
印象的だったのは、ここでは感染がどうとかではなく「マスクをしていればいい」という感覚でしている、人もいるということだった。感染がどうこう以上に、「マスクをしろ」という声の強い人によって、ここでは親も子供も全員がマスクをしている。立夏も過ぎた炎天下、最近は涼しいどころか寒いくらいの日が続いたが今日に限れば気温が高い。それでもサッカーでせわしなくボールを奪い合う子供たちはマスク姿、見渡せばこの子供サッカーの一団を除き、たまにジョギングやサイクリングの人が通る程度、駅からも離れ、車すら川辺まではめったに来ない。親の大半は橋梁の下なので日陰だが、子供たちは強い日差しにさらされている。
「いろんな人がいらっしゃいますから、仕方ないですね」